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第42話
「言ったよ。でも、一番右は客用寝室で、今から行くのは、僕しか使わないベッドルーム」
この屋敷の広さからすると、色々な部屋がありそうだ。
「深雪以外は使わないって。それって誰にも見せたことのない部屋か?」
深雪がコクリと頷いた。
「使用人は別だよ。でも、ベッドを使うのは僕一人だけ。晶が初めてのお客様だよ。客用寝室の方が良いのだったら、そっちに行くけど?」
どちらかが良いかなんて決まっている。
「深雪だけのベッドルームの方が良いに決まっている。客を迎えるのはオレが初めてなのだろう?光栄だな。あ、でもゴムの準備がない……か?」
深雪だけが使う部屋なら当然その類の準備はされていないだろう。一回目の時に晶は手持ちの分を使い切っていた。使用済みのは当然テッシュに包んでゴミ箱に捨てた。
深雪は頬を恥ずかしそうに紅く染めながらも、茶色と黒に煌めく眼差しはどこか妖しげな蠱毒に満ちている。
「その準備はないのだけれども、晶さえ良ければそのまま抱いて」
無粋なモノなしで深雪を深く貫きたい。ただ、深雪の過去は全く咎める積もりもないが、病気だけが怖い。毎晩違った男に開いてきた肢体なのだから。
「抱きたいに決まっている。ただ……」
どう言えば深雪を傷付けないだろうかと考え込んでしまう。女執事に提示された条件にも「避妊具着用」はなかった。それに、深雪の紅色に濡れた唇にも、過去の男達が欲望の放埓を流し込んでいるハズで、深雪の口の中に怪我が有れば、HIVウイルスに感染している恐れは充分にある。
この洋館に招き入れられた晶も病気のことは聞かれなかったので、他の男達もそうだったのだろう。
「深雪の中を直接感じたい。しかし病気は怖い」との深刻なジレンマに眉間を寄せてしまっていた。
全裸の深雪は左手を晶と余程気に入ったのだろうか恋人繋ぎに絡めて、右手は確かめるように「通過儀礼完了」の証を手でしっかりと押さえている。手を離すとどこかに逃げてしまうのを恐れるような感じだった。それだけ、深雪やこの静謐かつ豪奢な洋館の住民にとって大切な「主人のシンボル」なのだろう。身体にその蒼と紫のどことなく花を思わせる綺麗なアザを出現させるためだけに、毎晩見も知らぬ男に肌全部を蹂躙することを許してきたのだから。
「晶が僕を直接抱くのを躊躇しているのは、もしかして病気の心配?」
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