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第44話
「でも……それまでは……心の底から残念なんだけど、直接は無理だ。今日は客用寝室に行こう」
深雪が大きな目をさらに大きく見開いた。子供が初めて犬や猫を見た時の驚いたような無垢な輝きに煌めいている。
「一週間もかかるものなの?
そして、こっちの方が大切なのだけれども一週間後、デートしてくれるの?こんな僕と?」
「こんな」と発音する時の深雪は昏い目の光をしている。深雪なりに、自分の過去を恥じているような感じだった。
晶は安全な情事しかしたことはない。途中で破れてしまったというアクシデントもなかったが、保険所で調べてみたことがある。その時には一週間結果を待った。
「ああ、オレが診断してもらった保険所ではそうだった。もちろん、陰性だったよ。それに、安全な行為しかしてこなかったから、一週間後に深雪も陰性って出たら、正式な恋人として、この洋館に、いや、もう深雪はこの屋敷に縛られる必要はないわけだから外で待ち合わせして、今夜のことはなかったことにした上で初めて会って意気投合して階段の隅とか人気のないところで接吻を交わして、今度はオレの部屋に誘う。あくまで、深雪さえ良ければ、だけどな」
深雪の清純な紅色で艶めいている唇が誰もが羨む理想の形の笑みを浮かべている。世界中の名だたる美術館でも、こんなに綺麗な天使の絵画や彫刻はないだろう。
大きな目からは誰もが口を付けずにいられないほど綺麗な涙の粒が盛り上がっている。
「晶、とても嬉しい。こんな僕を恋人にしてくれるんだ?本当に?一週間後に待ち合わせてデートしてくれるの?僕はデートなんてしたことがないからとても新鮮だよ。でも、お店とかに行くの?
僕はお酒を出すお店に行ったことがないから、ヘンじゃないかな?」
少し心配そうな表情を浮かべた深雪の唇に晶の唇を近付けた。
「ちっともヘンじゃないさ。皆が深雪を見ると思うけど、それはヘンだからではなくて、見惚れているからだ。それに、オレ、何が有っても傍にいる。オレを信頼して全て任せてくれたらいい」
深雪は清らかな涙を紅色の頬を伝わらせながらひたむきさを感じる表情で頷いて、動作を途中で止めて
「晶のことはとても信頼している。初めて出会って、恋に落ちるデート……そして、晶の部屋で恋人としての行為。僕にとってはまるで夢のようだ。とても幸せで。晶と出会えて本当に良かった
でもね……」
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