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第45話

 深雪の唇が優雅かつ華麗な笑みを浮かべた。「でも」何だろう?  一週間も待たなくてもいいよ?ウチのお医者さんは晶との夜が始まる前に、僕はまだ陰性だって教えてくれた。今夜は屋敷から出られないけれど、明日屋敷中の人間や分家の主人達に集まって貰ってココだけをお披露目すれば晴れて主人として認められる。そのお披露目が終わったら僕がどこに行こうと指図出来る人間は居ない」  そういえば、一日で検査が終わる病院も有ると聞いたことがあった。深雪の場合は専属の医師がついているのでもっと早く終わるのだろう。 「そうなんだ?でも深雪の綺麗な蒼と紫の印が本当の主人の象徴だと認めてくれない人間もいるんじゃないか?それに、ソコだけ見せるのは仕方がないけれど、深雪の素肌はオレだけが見たいし、オレだけのものにしたい。全て。」  この豪華な洋館を東京の一等地で保持出来るのだから深雪の家はかなりの資産家なのだろう。本家を蹴り落とす分家という話しは、大学の教科書で読んだ覚えがある。 「今夜の夜着は、通過儀礼の最中のもので、通過儀礼が終わった後は、また違った服が用意してある。印だけを見せれば大丈夫だよ?こっちに、来て」  深雪の手が深雪専用の寝室の扉を開いた。  シルクの天蓋付の純白のベッドは初夜を迎える清らかさに満ちていた。ベッドだけが有る部屋というのを初めて目にしたが、この広い洋館だったら、深雪が勉強に使っている部屋もこの部屋のたくさんの扉の一つには有るはずだ。 「ね、ベッドの天蓋の中央を見て?」  深雪が繋いだ手をそのままに、指で示す。 「あれが、主人の証……か?」  驚きの余り、声が掠れてしまった。  晶と深雪の視線の先には、年月が随分経過したのが分かる金――純金だかメッキだかは分からないが、深雪の洋館の豪華さから考えると純金だろう――の家紋じみた円形の中に、深雪の腰骨に浮き出たのと同じ模様が縮尺こそ違え刻んであった。 「あれがウチの本当の家紋で、僕が毎晩毎晩祈るように願っていたのは身体のどこかにあの形が現れることだった。  晶、僕の目だけだと幻かもしれないから、見比べて見てくれたら嬉しい」

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