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第46話

 深雪は手を解くと、胸の熟した野苺や、半ば育っていた深雪の欲望の証は気にならないように――深雪にはそれどころではなかったのだろうが、晶の目には艶やかな煌めきを発揮している――少し離れて佇んだ。情事の余韻に紅く染まった滑らかな背中の肌や翼が生えていてもおかしくはない清らかさが印象的な肩甲骨や背骨の突起すらも清純な中にも、どこか妖艶さを漂わせている。その背中に見入っていると、深雪が優雅にターンをする。  相変わらず腰骨は深雪の指でしっかりと押さえられている。 「ああ、キチンと確かめるから指を離してくれないか?」  深雪の情事の余韻の残る艶めいた聖なる美貌や、ツンと熟した胸の紅みとか深雪のすらりとした上半身、そして半ば育ち切った下半身にともすれば目が行きそうになるが、それはもう少し我慢しよう。それでなくとも、早くすれば明日の夜にでもこの洋館ではない場所でデートの誘いを快諾してくれたのだから。  深雪が指を恐る恐るといった感じで肌理の細かい肌から離した。腰骨付近といってもごくごく外側に位置するので、深雪の用意された衣服がどんな物なのかは分からないが、深雪の男性のシンボルなどの、出来れば晶しか見せたくはない場所はしっかり布地で隠すことは出来そうだ。  ベッドの天蓋はかなり高い場所にある。この洋館では収容は充分可能だが、普通の家ではこの天蓋が収まるような部屋の高さなど不可能だろう。  深雪の腰骨の碧と紫の「主人の証」をじっと見詰めてから天蓋の中央へと目を転じた。 「深雪のアザと同じ形をしている。それはオレが保証する。しかし、不思議だよな?こういうアザって一朝一夕には出来ないものだろう?どこかにぶつけて怪我をしたなら、ともかくさ」  深雪は黙って涙をはらはらと流している。何かで読んだ「涙を流す聖母マリア像」を彷彿とさせる清純な美しさが際立っている。 「泣くなよ……。深雪に泣かれるとオレはどうして良いのか分からなくなる」  そっと近づいて目から頬へと唇を辿らせた。手で拭うのが勿体ないほど綺麗だったので。 「僕に泣かれると、どうして晶が困るの?  僕が泣いて嫌がると男達は悦んでくれたよ?『その方が興奮する』とか言いながら」  あどけない口調と大きく見開いた目が清らかさに満ちてはいる。ただ、清楚な唇が紡ぐ言葉は確かに過去の男達との間に繰り広げられた、深雪にとっては不本意な夜ごとの情事の淫靡さだった。

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