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第47話

「男は、というよりオレは好みの美形の涙に弱い。深雪は高校へは行った?」  18歳の時からこういう生活だったということは聞いている。ただ、どこかの大学に休学中とはいえ籍があるのだから高校へは普通に通っていた可能性もある。 「ああ、行ったよ?卒業までは楽しかったな。大学はエスカレーター式なので入試なしで入学が決まったけれど」  深雪が幼い日々を思い浮かべるような遠い目をした。そういう眼差しも神秘的な静謐さに満ちている。 「高校は共学?それとも男子校?」  深雪は長い睫毛を瞬かせた。情事の余韻の小さな涙の粒がダイアモンドの清らかな煌めきを連想させる。 「共学だったけれど?」  大学までがエスカレーター式の高校ということはいわゆる良家のご令息とご令嬢が通う学校だろう。 「共学だったらさ、告白されたり、付き合ったりする人間も居ただろう?それにオレ達の行為が特殊な部類に入ることも知っているよな?」  深雪はコクリと頷いた。 「告白された経験はたくさんあるよ?ただ、ウチは通過儀礼を済まさないと『大人』としても扱われないから、普通の男女交際も厳禁だった。だから一度も付き合ったことはないのだけれども」  深雪は晶と比べれば若干身長は低いが170センチは超えているだろう。それにこの神秘的な美貌や細いけれど身体のバランスは最高に良い。ダメ元で告白する女子、いや男子まで居たことは想像に難くない。 「高校の時にさ、誰それは『とっても美人だ』とかそういう話題で男達が盛り上がった経験はあるのか?」  高校時代はとても楽しかったのだろう、深雪の綺麗な唇に淡い笑みが浮かんでいる。 「うん。あったよ?僕は聞き役だったけれど。あ、一番人気の女の子に僕が告白してみたら振られないかも知れないとけしかけられたこともあった」  深雪の容貌は中性的な美しさを持っているので、女性にも嫌われないタイプだろう。 「その美人の女の子がさ、二人っきりの時に泣いたら深雪だって困るだろう?どうして良いのか分からなくて、さ。今のオレはそういう気持ちだ。その美人の女の子だって清楚で大人しそうな綺麗な人だったのだろう?」

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