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第54話

 陶磁器のような肌理の細かい深雪の白い肌に真紅は良く映えるだろうし、一度はその部屋で深雪を抱きたい。けれど、今の深雪には純白のシルクが最も相応しい。 「あのさ、主人の証が出たらもうその客用寝室は使われないのか?純白も真紅も深雪の綺麗な肌に良く映えるし、どちらでも抱きたいな。もちろん、深雪が嫌でなければの話しだけど」  二年の間、毎晩知らない男に身体を蹂躙された過去を持つ持雪だ。せっかく肌に浮かんだ主人の証を得た今となっては、客用寝室は入りたくない場所なのかもしれない。  深雪は口紅を刷いたような唇を花のように綻ばせた。 「有り難う。でもね、この夜の儀式が執り行われている間は屋敷中の人間は自室から出ない『ならわし』んだ。晶も二階に昇る螺旋階段を使っただろう?あそこに、真紅のシーツを引き裂いた布で縛られながら立ったままで情事をされたこともある。それも僕が足がつくかつかないかの高さでね。あとは……この屋敷って広いんだよね?男達が言っていた。そのボイラー室でも強く貫かれたことがあったよ。ベッドの上は殆ど使っていないような気がする、今思えば」  晶だって深雪の煌めくような魅力に床に押し倒してしまったことを苦々しく思い出した。 「そうか……本当に申し訳ない。本当なら、ちゃんとベッドの上ですれば良かった」  深雪は長い睫毛に小粒のダイアを煌めかせてゆっくりと頭を横に振った。 「いいんだよ。晶は主人の証を僕の肌に刻んでくれた恩人だもの。この部屋で抱いてくれた後で、客用寝室にも行こうか?  さっきの質問だけれど、ウチは江戸時代から続く米問屋で、その後も色々な事業に手を出していてだいたいは順調なんだけども代々の主人にこのアザが有ると不思議なことに商売は栄えるんだ。主人候補ウチの血縁者に当然複数居て、皆が躍起となってこのアザを出そうと必死だよ」  深雪は空いた方の手で確かめるように綺麗な蒼と薄紫のアザを触っている。 「そのアザは遺伝か何かかな?」  胸の野苺の周りをゆっくりと円を描く。  その度ごとに小さな艶めいた満足そうな吐息が洩れるので止められない。 「んっ……、とても気持ちが悦い。多分ね。医学的には解明出来ない謎なんだ。ウチの先生達も分からないと言っていた、それにね……」  深雪の心の底から満足そうな声が聞こえてくる。

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