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第13話

その夜、sakuさんがまたTwitterに爆弾を落としたせいで 俺はなかなか寝付けなかった。 「あずくん再生数30万回おめでとう! あずくんを応援してるみんなもおめでとう! という事で俺からのプレゼントです。 今度は許可を貰ってるので消しません」 そんなツイートと共に30秒ほどの動画が流れる。 「はい、あずくんの曲が30万回突破したということで いつも応援してくれてる皆様に何かひと言どうぞ!」 インタビュアーの真似事のように話す sakuさんの弾んだ声がした。 恐らくsakuさんが撮ってるであろう画面は グレーのパーカーを着た男の子の手元を写している。 「…えぇっと、いつも、ありがとうございます。 …azuです。」 少し高めの声で小さく話す男の子。 うわ、azuだ。 繰り返し思い出していたあの時の声と一緒。 何を話すんだろう。 ドキドキしすぎて胸が痛くなってきた。 「30万回再生…嬉しいです、ありがとうございます。 まだまだ僕は未熟で… 未熟だから、 もっとたくさん曲を作ります。 この嬉しい気持ちを曲にするので、 また聴いてくれると、嬉しいです…」 相変わらず袖で手を隠し パタパタと所在なさげに動かしながら azuはゆっくりと丁寧に言葉を紡いだ。 緊張してるのかな。 こういうのに慣れてないから 必要以上に自分を出さないようにしてるのかもしれない。 「じゃあ最後に、「僕を見つけてくれた君へ」を ワンフレーズだけアカペラでお願いします!」 sakuさんの言葉にazuの身体がビクリと揺れる。 「えっ、やだ、やです。」 「やです。じゃねぇ! 顔が可愛いからってなんでも許されると思うなよ!」 「可愛くないんでやめてください。終わり!」 そこでazuの手が携帯に伸び、 ガタガタと音がして動画は終わった。 あーーーー!なんだこれ!!! もう一度巻き戻す。 「えっ、やだ、やです。」 あーー!!可愛い!!! やだとか言っちゃうタイプなのか!!! 素の話し方出てるじゃん!!! なんか話し方幼いし声可愛いし、しんどい!!! 繰り返し見返そうかと思ったが 今度は消されないから慌てる必要もないか、と とりあえず携帯を置いて心を落ち着かせる。 sakuさん、ほんと神。 ファンの心を分かりすぎて、ほんと神。 でもさすがに アカペラでは歌ってくれなかったか。 聴きたかったなぁ… 目を閉じて頭の中で曲を流す。 「どこにいても目が君を追う 靴の音 裾は揺れ 身体がふわりと宙を舞う あの日からずっと君が好き」 俺の大好きなところ。 「僕を見つけてくれた君へ」のラストのサビ、 いつ聴いても、何回聴いてもゾクゾクするところ。 誰を思い浮かべて歌ったんだろう。 もっとazuの考えてることが知りたいなぁ。 どうして、そこまでして素性を隠したがるのだろうか。 sakuさんとかは完全に顔出ししているし、 人気のある人は大体完全とは言わないまでも、 口元を隠した自撮りとかをTwitterにあげたりする。 azuなんて、手すら隠したがっているのに。 いつか、顔出しをする日が来るのかな。 どんな顔をして、どんなふうに笑って、 何を感じてどんなふうに歌うんだろう。

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