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第26話
「はーい、おつかれ」
「可愛かったよ〜グッドグッド」
kororiさんはぐっと親指を立てる。
俺は、はぁ、と息を吐いた。
「きんっちょうした…」
「うんうん、緊張したね、可愛いねぇ」
ぐりぐりと頭を撫でてくるkororiさんに
抵抗する気力もない。
どっと疲れた。
一気に疲れが押し寄せてきて
ああ、俺、今気張ってたのか…と気づく。
疲れるとすぐに眠くなるんだよなぁ。
そもそも体力が無さすぎるのが良くない。
「っていうか、sakuさん!
アカペラって何?!聞いてないんですけど!!」
俺はkororiさんの手を払い除けて
ぱっと顔を上げた。
事前に聞かされてても歌うわけないけどさ。
sakuさんは、何の事?とでも言いたげに微笑んでいる。
「歌ってほしかったなぁ〜
わたし「僕を見つけてくれた君へ」
すっごい好きなんだよね〜」
kororiさんは口ずさんだ。
「どこにいても目が君を追う
靴の音 裾は揺れ
身体がふわりと宙を舞う
あの日からずっと君が好き」
うわ、恥ずかしい。
自分で書いた歌詞だけど
他の人が歌うのを聞くと知らない曲みたい。
「ここキュンとしちゃう〜
なんか、学生って感じが眩しい」
kororiさんはうっとりと目を細める。
「これ実体験?」
「実体験っていうか…」
「好きな子のこと歌ったの?」
sakuさんの問いに
俺はふるふると首を横に振った。
「いや、俺、初恋まだなんで…」
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