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第30話

「うーわー!azuさん?!生きてる!」 nyaoはそう言うと俺に抱きついてきた。 突然のことに固まる俺の身体。 スキンシップ激しくないか。 「そ、りゃあ、生きてますよ…」 「うっわー!喋ったー!声やばー!!!」 なんなんだ。 苦笑いするしかない。 人見知りする方ではないが こうもグイグイ来られるとどうしたらいいか分からない。 「nyaoです初めましてazuさん大好きですわーい!!!」 nyaoは早口でそう言うと満面の笑みを俺に向けた。 俺より二つ上らしいが、 見た目と声から全くそんな風には見えない。 特別声が高いわけではないのに 鼻にかかったような可愛くて甘い声。 オレンジに近い茶色の髪をふわふわと遊ばせている。 目鼻立ちがくっきりとした少し幼い顔の青年だった。 「azuさんの曲めちゃくちゃ聴いてるよ〜! もー、ほんと最高!」 真正面から褒められて、素直に照れてしまう。 「ありがとうございます… 俺もnyaoさんの曲聴いてます…」 正確には、曲を提供するという話を聞いてから 初めてnyaoの曲を聴き始めたのだが、 それは言葉の綾というものだ。 「nyaoでいいよー!敬語もなくていいよー!」 いいのか。 いいなら、俺、ほんとに遠慮なく喋るけどいいの? 「じゃあ、nyaoで。俺もazuでいいよ」 「わーーっ!!!やっば!!声やっば!!」 さっきと同じ反応が繰り返される。 すごろくで言うと振り出しに戻るって感じ。 「azuなんて恐れ多くて呼べないよー! azuくんにするね!azuくんazuくん」 nyaoはずっと満面の笑みを浮かべている。 こんなに尻尾振って喜ばれたら すっげぇ照れるんだけど…。 「こらこら、イチャイチャすんなー。 話始めんぞ、座れー」 sakuさんの声で 俺とnyaoは向かい合わせになって席に着いた。

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