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第32話
掲示板のコメントを読む。
可愛いで溢れかえったコメント欄。
無理…恥ずかしい…
その中で時々出てくる「richirichiさん」の文字。
「richirichiさんが良かった」
「azuもいいけど、やっぱnyaoにはrichirichi」
「曲は好きだけどazuっぽくない。
richirichiさんに寄せた?」
胸がちくりとする。
悔しいなぁ。
作り手によって、もちろん傾向はあるし
一貫した世界観であったり
リズム、メロディーラインであると
聞き手はついていきやすい。
それでもやっぱり、sakuさんのような
色んなジャンルの人に曲を提供できる人もいるわけで。
自分で歌う曲を作る時はそれでいいかもしれないが
もし今後、曲を依頼して貰えるなら、
俺は全力で良いものを作りたい。
そのためにはもっと、たくさん、色んな曲を
作れるようにならなければ。
なんか、書いてみようか。
ふわふわした何かを。
richirichiさんのような、それでいて俺のような。
机に向かってみる。
作詞、作曲の仕方は人それぞれだと思うが
俺はちゃんと机に向かってノートを広げるタイプだ。
机とノートがあれば曲が作れる。
そのせいでしばしば授業中は上の空だ。
勉強は好きなんだけど、
机とノートがあると、どうしても。
ごめんね、先生。
可愛いものを思い浮かべる。
たくさん浮かべた可愛い物の中から
書きたいイメージを選び取る。
俺はいつもイメージから曲を作る。
書きたいものはたくさんあって、
その中からひとつひとつ選び取っていく感覚。
曲から作る時や、詞から作る時と様々だが、
大抵は割と同時進行で作っている。
今回は、どうしようか。
真っ白なページに、俺はペンを走らせた。
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