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第33話

スランプすぎる… 可愛い曲ってなんだ… 可愛いってなんだ… 俺は机に突っ伏した。 悔しすぎて、 richirichiさんの曲を昨日からエンドレスで聴いている。 そのせいで頭の中はショコラティエだ。 「魔法をかけるの ショコラティエッ♪ 君の心に ショコラティエッ♪」 なんだよ、ショコラティエって。 わっかんないよ。 でも、音の組み合わせ方はめちゃくちゃすごい。 俺はこんなに遊べない。 それが余計に悔しいのだ。 うんうん唸っていると 冬弥が俺の頭をコツンっと小突いた。 「うるせー。なんだよ」 「俺今おセンチなの…放っといて…」 また顔を伏せると 冬弥は俺の前の席にドカッと座った。 「なんだ、また体調崩したのか」 「んーん、違うけど…」 確かに俺は体調を崩しやすい。 自分の弱さには毎度ほとほと呆れるが、 今回はそうではない。 「じゃあ、なんだ」 「んー…」 「何悩んでんだよ、言ってみろって。 お前すぐ溜め込んで、どうせ倒れるんだから」 そう言って、突っ伏した俺の頭を撫でる。 最近頭を撫でてくる人が多い。 俺はチラッと顔を上げて冬弥を見た。 「可愛いって、何だと思う…?」 「はぁ?」 冬弥は一瞬目を見開いたあと 教室を見渡してくいっと親指を動かした。 「箕島さん。クラス一の美女」 「…可愛いけど、俺が求めてる可愛さとはちょっと違う」 っていうか、冬弥の口から あの子可愛いとか聞いたことないな。 箕島さんみたいな子がタイプなんだろうか。 モテるのに誰とも付き合わないのは 理想が高いということか。 「何を求めてるんだ?」 「んん〜…なんか、こう、もぞもぞ、というか、んん…」 「日本語喋れ」 書きたいものはあるんだ。自分の中に。 言語化するのって難しい。 「歌を作りたいんだけどさ、可愛い曲。 でも可愛いが分かんなくて、歌詞が書けない」 「それさ、歌詞作る前に曲作った方がいいんじゃね?」 「実はいくつかラフ音源はあるんだよなぁ」 「それ弾いてみてよ」 「ええ?」 「弾けば何か思いつくかもしんないだろ」 冬弥は半ば強引に俺を教室の外へ連れ出した。

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