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第37話
伊咲は帰ろうとする俺を捕まえる。
「七瀬、このあと暇?」
「何で?」
首を傾げた俺に、
伊咲は携帯の画面を嬉しそうに見せた。
vommitだ。
nyaoの活動ページが開かれている。
「これを機に、七瀬もnyaoくんにハマってほしい!」
なるほど、俺にnyaoを布教しようということか。
確かにazuとのコラボでnyaoの事は気になっている、
が、残念ながらタイミングが良くない。
「ハマらないよ」
俺は鞄を肩にかけ直す。
「俺もうバイト行くし」
伊咲はえぇー、と眉を下げた。
ごめんね。
「七瀬ってバイト何してたっけ?」
「駅前のカラオケ」
「えーカラオケとか大変そー」
「バイトなんて、どこも大変でしょ」
そうだけどー、と伊咲は呟く。
「それよりさ、尚史がすごい顔でこっち見てるから
相手してあげてよ」
俺の言葉に伊咲は振り返った。
急に伊咲と目が合った尚史は、
ビクッと肩を震わせるとわざとらしく目を逸らす。
「…仕方ないなぁ。
七瀬帰っちゃうし、たまには構ってあげないとね」
そう言って笑った伊咲は可愛いと思った。
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