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第44話

出口の方へ行くと 受付のところに七瀬さんがいた。 「ありがとうございました……っ?!」 俺に気づくと驚いて目を見開く。 その反応、何なの? 笑っちゃうからやめて。 俺は受付の机に肘をついて七瀬さんに話しかける。 「グラス怒られませんでした?」 「怒られたのでレジにされました…」 「あははっ」 声を上げて笑う。 なんか、可愛いんだよなぁ。 根がいい人そうなのが好感度高い。 その時。 「必要以上に懐くな」 「うわっ」 冬弥がグイッと俺の腕を引っ張った。 バランスを崩して冬弥の胸にもたれ掛かる。 「冬弥?!なんでいんの?!」 「俺も帰るって言った」 いや、言ってたけど お前なんて言って出てきたんだ。 「すんません、こいつ危機感ないので」 「あ、いえ…」 七瀬さんは突然現れた冬弥に戸惑っているようだ。 って言うか、危機感ないってなんだ。 七瀬さんに変なこと言わないでくれ。 「ほら、帰んぞ」 そう言って冬弥は 俺の腕を掴んでいた手を下へ移動させ そのまま手を握った。 俺はギョッとする。 七瀬さんの前で、いや、七瀬さんの前じゃなくても 人前で手を繋がれるのは恥ずかしい。 「わかった、わかったから、手離して!」 「お前すぐふらつくからダメ」 冬弥はさらに指まで絡めてくる。 お願いだから、本当にやめてほしい。 こないだからやたらこいつは俺と手を繋ぎたがる。 「ほら、「七瀬」さんに挨拶して」 冬弥はふっと鼻で笑うように微笑んだ。 ちょっと小馬鹿にしたような言い方にムッとしたが 七瀬さんにはニコッと笑いかけて挨拶した。 冬弥の言うことを聞いた感じになってるのは癪だが それは仕方がない。 「七瀬さん、またね」 「…っ!また、ぜひお越しくださいませ!」 マニュアルのような対応をしてるのに 嬉しさが隠せていない七瀬さんに やっぱり可愛いという感想を持ってしまう。 冬弥がそんな俺達のやり取りを 冷ややかな目で見ていることには 二人とも気がつかなかった。

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