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第51話

「七瀬さん…?」 蒼くんはキョトンとした顔で俺を見つめる。 いきなり袖を掴まれたらそりゃ驚くよな。 でもごめんなさい。 男に告白されるのとか初めてで どうしたらいいか分からないんです。 助けてください。 蒼くんがazuだということも忘れて ふるふると首を横に振って、必死で目で訴えた。 蒼くんは少し悩んだ素振りを見せたあと うん、と深く頷く。 伝わったのだろうか。 「えっと、誰ですか?七瀬くんの友達…?」 田原くんは俺と蒼くんの間に割って入ろうとする。 大人しそうな顔して強引なの、超怖い。 蒼くんはそんな田原くんを無視して 一瞬目を瞑り、再び開けた瞬間、 「探してたよぉ、ここにいたんだぁ」 コロッと声色を変えた。 「え…?」 「昼休みは俺と会う約束でしょ?」 「えっと…」 「俺、はやく会いたくて探しちゃったぁ」 甘ったるい声で話しながら、蒼くんは俺の腕に抱きつく。 ギョッとする。 何が始まったんだ?! 「ねーぇ、はやく行こ?」 上目遣いで俺を見上げる蒼くんに心臓が速くなる。 まるで恋人と話すみたいな。 ぶわっと顔が熱くなった。 田原くんは口をあんぐりと開けて固まっている。 そりゃそうだよな、俺も同じ心境。 「七瀬さん、下の名前何?」 耳元で囁かれぞくりと腰が疼く。 何だこの声…ズルすぎるだろ… 「ま、真央…」 「真央、行こっ」 蒼くんは俺の手をぎゅっと握った。 握ったというか、指を絡めてきた。 それを田原くんに見せびらかすように 顔の前に持ってくる。 な、なにこれ?!?! なんだこれ?!?!?! ぐるぐると目を回していると 蒼くんはグイッと俺を引っ張った。 このまま立ち去ろうということか。 田原くんがハッとして慌てて俺たちを引き止めた。 「え、ちょ、ちょっと…?!」 「何ですか?」 蒼くんはニコッと田原くんに向かって微笑んだ。 「俺、七瀬くんに、話が…」 「あの、俺と真央付き合ってるんで」 ひぃっ!! 俺はもう完全に茹でダコになっていた。

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