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第63話
「なんかみんなザワザワしてるね」
「何が?」
「コメント」
そこで、azuくんはコメントの存在を
認識したようだ。
「……」
急に黙り込む。
「azuくん、どした〜?」
「あ、コメント読んでた」
思わず吹き出した。
ほんと、マイペースなんだから。
azuくんはコメントを見ながらしみじみと呟く。
「俺、こういうふうに、
みんなのコメントとか呼んだことないから
なんか、嬉しい…」
そっか、azuくんは掲示板しかないから
こういう生の声ってなかなか見れないもんね。
「みんな、azuくんに伝えたいことあるなら
今がチャンスだよ!!」
僕の言葉でコメントが飛ぶように増えた。
ひゅんひゅんと入れ替わりが激しくなる。
azuくんは流れてゆくコメントのスピードに
ギョッとして目を見開いた。
「え…コメント早すぎて読めなくなった…」
「あははっ、azuくんショック受けてるから
みんなコメント控えて〜」
なんて言っても、コメントの流れが止まるはずもなく。
僕はマウスを動かした。
「こうやっていじればゆっくり見れるよ」
azuくんにマウスを渡すと
ひとつひとつゆっくりと読んでいく。
そんなスピードじゃ永遠に間に合わないと思うよ?
「今ね、azuくんめっちゃコメント読んでます」
僕の言葉でまたコメントが増えた。
「ああっ」とazuくんの悲痛な声がする。
「今読んでたのどっかいった!
ねぇ!みんなコメントゆっくり打って!」
ファンの人に怒りだした。
面白い。
「なんか拾って読んであげれば?
質問とかに答えてあげるとか!」
「なるほど……
じゃ、えっと、好きな食べ物は何ですか?
……ハンバーグです」
「あははっ、かっわいー
よりによってそういうコメント拾うんだね」
「えっ?!違った?!」
「ううん、いいと思う〜」
azuくんのそういう天然なところ、好きだよ。
見てて楽しい。
「嬉しいなぁ…みんないつもありがとう…
俺もっともっと頑張るね」
azuくんがふにゃふにゃと笑ったのがうれしくて
放送誘ってみてよかったなぁなんて
単純に僕も嬉しくなってしまった。
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