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第66話

蒼に会ったのは雑談放送から一週間経った頃だった。 ドリンクバーの補充をしていると 後ろから声をかけられた。 「真央さーん、久しぶり」 振り返るとひらひらと手を振る蒼。 久しぶりに見るその男の子に自然と心が踊る。 「もう来ないかと思った…」 小さく呟いた俺の声にキョトンとした後、 「だから俺、カラオケ苦手なんだってば」 と、蒼は肩を揺らして笑った。 だって、放送聞いた感じだと めちゃくちゃ忙しそうだったから。 忙しい合間を縫って 苦手なカラオケに来るだなんて思うわけない。 「俺が来るの待ってたの?」 蒼の言葉に体温が上がる。 待ってました。 めちゃくちゃ待ってました。 ごめんなさい。 ついでに謝ります。 放送を聞きながら、蒼の顔を思い浮かべて めちゃくちゃ悶えてました。 ごめんなさい。 「待ってたっていうか…次いつ会えるのかなって」 今日は会えたけど、 じゃあ次もまた会えるという確証はない。 azuにまた会いたい、だなんて おこがましいにも程がある。 「えー、じゃあ、LINE交換しとく?」 さらりと言った蒼に 「えっ?!?!」 俺はギョッとして飛び上がった。 いいのかそれ?! だって、それって azuの連絡先を知るってことだろ?! そんな簡単にファンに個人情報教えていいのか?! 「カラオケに来ないと会えないの嫌だし」 蒼はポケットからスマホを取り出す。 「電話番号教えて」 うわーーーーーー。 まじか。 これは夢か? 最近、夢みたいなことばかり起こるから怖い。 「えっと…」 震える声で自分の番号をゆっくり口にする。 「おっけー」 蒼は満足気に微笑んだ。 「これでいつでも会えるね?」 なんだそれ。 人たらしすぎて、ずるくないですか。

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