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第79話

「真央さん、出たよー」 蒼がわしゃわしゃとタオルで頭を拭きながら ぺたぺたと部屋に戻ってきたので、 俺はそっと携帯の画面を隠した。 azuについて話してたのが蒼にバレるのはよくない。 「なんか、ちょっと目覚めたかも」 蒼はタオルを首に掛けた。 まだ濡れた髪の毛からぽたぽたと雫が落ちる。 その雫をなんとなく目で追っていると パチッと目が合った。 赤く蒸気した頬に、濡れた目。 いけないものを見てしまった気がして慌てて目を逸らす。 っていうか、何でバスローブを着てるんだ。 ナイトウェアも置いてあっただろ。 楽しそうに歌いながら ベッドにコロリと寝転んだ蒼に力が抜ける。 頬と同じく蒸気して赤くなった足が覗く。 無防備にも程がある。 「…俺も入ってくる」 「いってらっしゃーい」 蒼はヒラヒラと手を振った。 ***** 風呂から上がって部屋に戻ると 蒼はすぅ…と寝息を立てていた。 寝るの早くない…? 俺は長風呂タイプではないから せいぜい15分もかかってないと思うんだけど。 「目覚めたとか言ってたのはどの口だよ…」 蒼の頬をムニッと押す。 柔らか… 赤ちゃんか? 寝顔も赤ちゃんみたいで可愛いし。 ふと気づく。 首元に赤い跡。 虫にでも刺されたか? そっと撫でると「ん…」と蒼から吐息が漏れて 慌てて手を離す。 もしかして、キスマーク…? 鎖骨の近く、少し口の広い服を着たら見えそうな位置。 なんて、独占欲の強い…。 ドクン、と心臓が音を立てた。 これ、付けたの冬弥なんじゃないか。 俺を見る冷めた目。 見せつけるように蒼に指を絡めていた姿が浮かんだ。 一度そう思ってしまった身体は ドクドクと心臓に血液を巡らせ、頭がガンガンと響く。 何で、蒼にキスマークをつける必要がある? それ以上見ていたくなくて 俺は蒼にバサッと布団をかけた。

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