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第4話

 キクは目を閉じて、男の上で腰を振っていた。  岩城の剛直はキクのいいところを擦ってきて……気持ちがいい。 「あっ、あかんっ、あっ、あっ、イくっ、あっ、出るっ、出るっ」    仰臥した男の引き締まった腹部にてのひらを置いて、体を支えながらガクガクと体を揺すったキクのペニスの先端から、ぴゅ、ぴゅ、と白濁が散った。  キクは身の内の肉棒を締め付けながら、絶頂の波に襲われ、それに身を任せた。  射精の瞬間は、頭が真っ白になって……。  その解放感が癖になる。  もっと味わいたい。  もっと、もっと。  キクの頭を、空っぽにしてほしい。 「旦那様……も、もう一回、いいどすか……」  尋ねながら、キクはまた、くちゅ、くちゅ、と濡れた音を立てて腰を揺らし始めた。  牡を咥えたままで前後に腰を振ると、腹側の感じる場所に男の熱塊が当たる。その度に、ビクビクと肩が跳ねた。 「あん……あっ、いい、いいっ」  キクは瞼を閉ざしたまま、自分の快感だけを追った。  そのとき、唐突に岩城に手首を掴まれた。 「えっ?」  キクが瞼を持ち上げるのと同時に、腹筋のちからだけで男が上体を起こした。  壮年を終えようとしている年代だろうに、驚くほどの若々しさだ。はだけたシャツの前からはきれいに割れた筋肉が見え隠れしていて、それがまた男ぶりを引き立てている。  女に疲れた、とぼやいていた岩城は、さもありなん、深みのある男らしい顔立ちに苦笑いを浮かべて、キクのひたいを小突いてきた。 「まったく、困った子だね、キク。きみは僕のことを愉しませてくれるんじゃないのかな?」  岩城の指摘に、キクの頬が赤くなった。またやってしまった、とこれまでにも何度もした反省が湧き上がってくる。  キクはいつも、自分の快感ばかりを優先してしまうので、それでお客様からよく怒られているのだ。  けれど……。 「そ、そやかて……」  キクは潤んだ瞳で岩城を見つめ、腰をゆるゆると振り続ける。 「こ、これ、気持ちええし……あっ、当たるっ、あっ、あっ」 「きみが当ててるんだよ。まったく……いやらしい子だ」  喉奥で笑い声を漏らして。  岩城が、よいしょ、と掛け声とともに体勢を入れ替えてきた。  どさり、とキクの背中が布団の上に横たわる。 「えっ? だ、旦那様っ?」  キクの後ろから岩城の牡が抜けてしまいそうで、咄嗟にそこを食い締めながら、キクは男を見上げた。  年相応の皺を刻んだ目元が、やさしく(たわ)んで。  顎髭をひと撫でした岩城が、キクのすんなりと伸びた足を抱え上げる。 「きみは僕のこれがお気に召したようだから、じっくりと味わってもらおうかな」  そう囁いた岩城が、にっこりと笑った。    キクが、きょとんと瞬いた瞬間。  パン!と腰を打ちつけられた。  突然のことに、キクの息が詰まる。  パン!、パン!とちから強い律動が、キクに休む暇を与えずに繰り返された。 「ひぃっ、あっ、あぅっ」  キクは後孔を出入りする男の欲望に翻弄され、体を捩って身悶えた。  ごりごりと内側を擦り上げられ、恐ろしいほどの快感にキクの陰茎がまた白蜜を噴き上げた。 「ひっ、あ、あ、あ……」  痙攣の止まらない体で、達した余韻を味わおうと脱力したキクだったが、岩城はぬちゅぬちゅと肉筒を掻き混ぜるような動きを止めてくれない。 「あっ、ちょ、ま、待っとくれやすっ」  キクはちからの入らない手で、それでも男の腕を掴んだが、岩城はちらと笑みを見せただけで奥の奥まで挿入したそれをぐりぐりと動かし始める。 「ああっ、い、一回、と、止まってっ、あっ、あっ」 「きみはさっき、好きなように動いただろう? おあいこだよ」  目尻に皺を寄せる、やさしい笑い方とは裏腹に、男の性交は容赦なかった。    大きく張り出したエラの部分が、キクの行き止まりのような場所にトントンと当てられる。 「ああっ、あっ、あかんっ、かんにんっ、かんにんえっ」  普段、そんな場所まで暴かれることはほとんどなくて……。  キクは、最奥部への責めに身を震わせた。  ぎゅうぎゅうと絞り上げた牡は硬く、大きい。  それが、ごりゅ、ごりゅ、とピストンし始めたのだから、たまらなかった。 「ひぃっ、あっ、イってるっ、あんっ、あっ、あっ、も、もう、イってるからっ」 「僕はまだだよ。この歳になると、一回が長くてね」 「いやぁっ、あっ、し、死ぬっ、あっ、あっ」 「ははっ。これが欲しかったんだろう? ほら、もっと味わっておくれ」  ばちゅ、ばちゅ、と腰を打ちつけられて、キクは全身を朱に染めながら喘ぎ続けた。  岩城はまだ、彼自身が言うように一度も達していない。  一回の交わりで、ここまで翻弄されたのは初めてだ。  キクに男の味を教えた……最初の恋人との性交だって、これほどではなかった。  気持ちいい。  気持ちいい。  頭が真っ白になる。  キクの全身が、快感に支配されている。 「ああっ、あぅっ、ま、また、出るっ、出るぅっ」  絶頂に向けて、キクの後孔がうねうねと蠢き、岩城の肉棒に絡みついた。  その、逞しい牡をぎゅうううっと咥え込んで。  奥の奥へと、大きな先端を捻じ込まれ。 「ああああっ」  キクはまた、達した。  出る、と言ったのに、キクのそこからは白濁は漏れなかった。  女のように、ドライオーガズムで達したのだった。  ビク、ビク、と断続的に体が跳ねる。  射精しなかったキクのペニスは、中途半端に勃起したままでヒクヒクと揺れていた。 「キク。まだだよ。そこに這いなさい」    忘我の淵で横たわるキクを、繋がったままで岩城が器用にうつ伏せにしてくる。  キクははぁはぁと荒い息の狭間で、 「ま、待っとくれやす……あかん、いまは、あきまへん」  と切れ切れに訴えたのだが、年嵩の男はにっこりと笑って首を横に振った。 「僕がまだだよ、キク」  キクは……。  キクはその日、底のない岩城の性欲に翻弄され、初めて、白旗を上げたのだった……。   

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