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キスしないと出れない部屋に此上と千尋を閉じ込めてみた

目を開けると此上が自分を見おろしている。 あれ?なんで?此上? まだ、頭がボヤけているのかしっかりと考えられない。 「千尋、大丈夫か?」 そんな質問されて、何を大丈夫か?と聞いているのだろう?それを知りたくて、「何が?」と質問を返した。 「気分悪くないか?」 「ううん、大丈夫……」 大丈夫と答えながら周りが視界に入ってくる。……んん?あれ?知ってる場所。 知ってるけれど、自分の部屋とかじゃない…… 「また!!!」 西島は勢い良く起き上がった。 この部屋は神林と閉じ込められた部屋だ…… キスしないとでれない部屋。 えっ?なんで?なんでまた? 「また?」 此上に質問された。 「……此上……」 ある重要な事に気付く。 キスしないと出れない部屋に此上と2人。 まさか……此上とキスしないと出れないのか? 思わず此上を見てしまう。 「千尋、また……って言ったよな?お前、この部屋きた事あるのか?」 「……前に」 「誰と?」 「……か、神林……」 神林!!!! 神林が自分からご奉仕します!と言った意味が分かった。 なるほど……そういう事か…… 「キスしたのか?」 「は?」 「キスしないと出れないだろ?キスはしたのか?」 「……な、なんか妙に迫力ない?」 そう……キスはしたか?と聞いてきた此上がじわじわと西島に迫ってくる。それも何か怖い。 「したのか、してないのか?」 「……す、するわけないだろ?俺には碧が居るし、神林は友達だし」 「じゃあ、どうやって出たんだ?」 「チョコの包み紙越しにした……」 「は?チョコの包み紙?」 「ポケットにチョコの包み紙をいれっぱなしだったから……それ越しに」 「じゃあ、したんだ?」 此上はニコッと微笑む。でも、その微笑みは迫力があって怖い。 「いやいやいや、包み紙ごしだよ?触れてない!」 西島は頭と手をブンブン振りまくる。 「キスの真似ごとはしたって事か?」 「悪いか?部屋を出たかった……って、あれ?此上……なんでこの部屋がキスしないと出れないって知ってんの?」 西島は話している途中でふと此上はここに誰と閉じ込められて、キスをしたのか……そんな質問をしたのだろうと疑問に思った。 初めてここに閉じこめられた時、ここがどので何も分からなかったのに……此上は誰と?と聞いた。 1人で閉じ込められた可能性もあるのに…… 西島の質問に此上は、「……あれ?碧ちゃんに聞いてない?」と答えた。 そして、しまった!と思ってしまった。 「こーのーうーええええ!!!」 目の前の西島が思った通りにタタリ神のように変貌してゆくのがわかる。 想像よりも迫力がある。 「碧になにした?いくら此上でも許さない」 凄い勢いで胸ぐら掴まれた。 西島から想像できないくらいの迫力と行動。 幼い頃から見てきたから、こんな一面も持っているのかと感動すら覚えてしまう。 「俺からはノータッチだ!お前の碧ちゃんだ……殺されるのは想像出来るからな」 「何だその、俺からはノータッチとか!まるで碧から……えっ?碧から?」 胸ぐら掴んでいた手が動揺からか緩んだ。それを見逃さない此上は西島の手を掴み、そのままベッドへ押し倒した。 そして、両手を押さえつけ力を入れる。 「いたっ、」 突然の行動と力に顔が歪む。 「言っておくけど、碧ちゃんはお前に会えなくなるのが嫌だからの行動だからな!」 西島を見おろして碧の行動のフォローをする。 「それにキスは頬だ……唇じゃない」 「頬……それは此上が碧に?それとも逆?」 どちらにせよ、どちらとも嫌だ!! 「俺がされた」 なん……だとおおお!!! 可愛い碧の唇が此上の頬に!!! 許せんんん!!! 西島は此上の下で力を込めて彼の手から逃れようとしたが此上だって危険を察知しているのだから更に力をかける。 全体重をかけた。 「此上重い!!どけ!」 「嫌だね、どいたらお前、俺殴るだろ?」 「チッ」 まあ、行動読まれるよな!と西島は舌打ち。 「で、どーする!キスしないと出れないぞ」 「はあ?此上と?」 「キスならどこでもいいみたいだぞ?オデコにしてやろーか?」 「ふざけんな!誰が此上と!」 「お前なあ……物凄く嫌がってるけれど、昔、俺にキスしてきたの忘れたのか」 此上の言葉に西島の顔がみるみる赤くなる。 「なんで今、言う!!!俺の黒歴史!」 顔を真っ赤にさせて怒る西島。 「えっ?黒歴史にされてるのか?まじで?結構ショックなんだけど」 自分の上にいる此上がしょんぼりとしているように見える。 「ショックって……」 あー!やばい、どう言えばいいのだろう? 振られた相手だ。 切ない思い出なのだし、高校生の時とかめっちゃ、思春期じゃんか!行動が先に来てしまう子供だったし…… でも、しょんぼりされてしまうと困る。 「……戸惑ってる」 此上から見抜かれた。 「うるさい!」 「まあ、とにかく大人なんだからキスの1つや2つどうって事ないだろ?」 「は?まじでする気?」 「しないと出れない……このやりとり永遠にするつもりか?」 「……でも」 「碧ちゃんは潔かったぞ!お前に会えないのが辛いからって俺に覚悟決めてください!だってさ……強いなあの子」 此上はふふっ、と笑う。 確かに碧は自分より決断力もあるし、強い。 「お前が選んだ相手が碧ちゃんで良かった……」 「此上……」 西島は此上を見つめる。 すると、此上の顔が近いのに気付く。 「ちょ!近い近い!!」 「あ?キスするんだろ?」 「はあ?しないし!」 「じゃあ、一生ここだ!碧ちゃんに会えなくなるぞ?いいのか?」 ……それは、……いやだ!!!! でも、今更、此上とキスとかキスとかキスとか!!! 小っ恥ずかしいに決まっている!! ああ!!なんで、俺は2回もこの部屋にいいい!!誰の陰謀だ、ちくしょおおおお。 「俺からキスされるの嫌か?だったらお前からだな」 此上は西島を解放すると起き上がらせる。 「はあ?俺がキス?」 「俺からは嫌なんだろ?」 「やだ!!」 「なら、お前からするしかない」 「それもやだ!」 「子供か」 ブンブン頭を振って嫌がる西島に突っ込みを入れる。 「そこまで嫌がられると結構凹む」 此上がまた寂しそうな顔をする。 その顔を見ると罪悪感がきてしまう。 「だって……」 「そんなに嫌がられたら無理やりでもしたくなるよな」 凹んだような顔をしていたはずなのにニヤリと笑う此上。まるで、悪戯っ子みたいな……いや、悪者みたいな? グイっと腕を引っ張られて此上のかなり近くに……近いというか腕の中。 「まてまてまて!!!」 西島は此上の身体を両手で押し、自分は後ろへ下がる。 でも、下がりすぎて手を着こうとした場所には何も無く手のひらが空をさく。 あれ? なんて考える暇もなくバランスが崩れた。 ベッドの下へ落ちる!!! そう覚悟したのに落ちるよりも先に此上の手が西島の腕を掴み引き寄せられた。 「ほんと、お前の危なっかしいとこ成長してないよな」 勢いでまた此上の腕の中でそんな事を言われた。 「成長してないとか言うな!」 言葉にイラっときて顔を上げて文句を言えばかなり顔が近い事に気付く。 おっとお!!! 西島は此上から離れる。 「何照れてんだ?」 クスクス笑う此上。 「照れてない」 キッと睨む。 「ほんと……変わんないよな」 此上の手のひらが西島の髪に触れた。 「変な意味じゃなくて……そのままで居て欲しい部分がそのままって事」 「なにそれ?」 「千尋には解らなくていいよ、俺だけ分かってれば」 「な、何かムカつくんだけど?」 怒る西島の顔に触れた手のひらは下へ降りて彼の手を取った。 「なに?」 突然どうしたのか?とキョトンとなる西島に此上は。 「……一生お守りしますよ姫」 そう言って手の甲にキスをした。 「あ!!!」 此上が言った言葉と手の甲のキスで西島は自分の中で抹消したい史上最悪の黒歴史を思い出した。 「このうええええ!!」 顔が真っ赤になる。 「可愛かったよな、あの時の千尋」 「忘れろ!!」 「確か写真が」 「はあ?そんなものなんてないだろ!」 「あるよ、コッソリ撮られてたやつが」 「俺は撮らせてない!」 「コッソリって言っただろ?頼んでたんだよ、神林くんとかムカつくけど佐々木くんとかに」 「はあ?俺知らない……あ!!くそ、あいつらあ!!」 そんなやり取りをしているとカチッと音がした。 「ほら、鍵開いたぞ姫」 「姫言うなあ!!!」 西島は叫びながら先に部屋を出た。 西島の史上最悪の黒歴史は高校1年の学園祭で無理やりクラスの出し物でやった劇で姫役をやらされた事だった。 ちなみに佐々木が王子様だった。 忘れたい黒歴史なのだった。

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