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「ッ!!」
ばっと目を見開き、辺りを見渡す。
そこを支配しているのは、静寂と暗闇。乱れた呼吸のまま、のそりと起き上がって手探りでベッドサイドのパネルをいくつかいじってみる。
仄かな灯りが点いて、暗闇に慣れた視界を刺激してきた。何度かまばたきを繰り返してから、目の前にある人影にびくりと肩が揺れた。
「は……ひでぇ顔」
ベッドの正面にある、大きな姿見。そこに映る俺は、寝起きというのに目は窪み、疲れ切った顔をしていた。
自慢じゃないが生まれ持ったお綺麗な女顔のおかげで誰からも可愛がられ、男からも女からもわりとモテて――顔面で苦労などしたことのないこの俺が、だ。
寝ながら号泣していたのか、ばりばりに渇いた涙が痛い。腫れまくった二重が一重になりかけてて酷い顔に輪を掛けている。ほんとに不細工。
何日か前に真壁が姿をくらませた時、志摩も同じようなぶっさいくな顔をしていたことを思い出してブハッと吹き出してずぅんとへこんだ。よりによって何で今あのバカップルを思い出した、俺。
煙草に火を点けて、すうっと吸い込む。
……こんなに女々しい自分が居るだなんて、知りたくなかった。
「神谷は顔に見合わず男らしい」と言われることが誇らしかったし、俺自身そう思っていた。女顔だけど、中身は違うんだぜ、と。
溜息とともに煙を吐き出し、俯く。
自分が思っている以上に、俺にとって真壁の存在は大きく、拠り所にしていたらしい。ただの失恋で、ずるずる、ねちねち。女より始末が悪い。
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