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 今日の空は無駄に晴れ渡っていて、朝っぱらからラブホ街をひとりで歩く自分が無性に汚らしいものに思えた。  スマホを取り出すと、通知が2件来ていた。じりじりと照り付ける太陽から逃れて日陰に移動してアプリを開く。  差出人はどちらもユウで、メッセージと画像だった。 「? ……うわっ」  ハートの絵文字付きで『頑張れ』のメッセージとともにピンク巨大な男のイチモツの写真が画面いっぱいに飛び込んできた。  それが乗っかっている神輿っぽい台座を、見切れてはいるもののたくさんの人が取り囲んでいる。何やってんのこれ。何なのこれ。何でピンクなの。なんでこんなにでけえの。  そして、『頑張れ』て。やかましいわ。余計に勃たねえわこんなもん見たら。  思わず、笑いが漏れた。なんだよこれ。励ましてるつもりかよ。笑いしか出ねえわ。  クックッと肩を揺らしながら爆笑と怒りのスタンプを交互に送り付けた。  さっきまで心の中はどんよりしていたくせに、本当に俺は現金だ。画像ひとつで笑える単純さだ。  ……うん。俺は、大丈夫。  笑顔のスタンプが返ってきたスマホを閉じ、煙草を咥えた。ピンクイチモツの余韻がだいぶ酷いが、おかげで寝起きよりもずっとすっきりとした気持ちで居られる。  きっかけが巨大ピンクイチモツってどうよ? とは正直思うけど。 「ん、あれ、火がねえ……」  ポケットと鞄と漁ってみるけれど、ない。煙草の箱の中にも入っていない。  まさか、ホテルに置いてきたのか。  口に咥えた状態で吸えないとなると、余計に吸いたくて仕方がない。まだ朝早いせいで、通行人はひとりも居ないうえ、見渡す限り近くにコンビニもない。 「あーマジか、ちょっと待てよおいー……」  煙草を咥えたまま、座り込んで鞄の中を改めて確かめる。だけど、使い慣れた100円ライターはどこにも見当たらない。   「ん」 「ん?」  目の前に差し出された、シルバーのジッポー。つつ、とそこから視線をずらした瞬間、唇にひっかけていた煙草を強く噛んでしまい、プチっとフィルターのカプセルが潰れる音が鳴った。 「――さ、佐野」  ジッポーオイルの香りが鼻孔をくすぐる。この香りが好きで、何度かジッポーに手を出したことはあるんだが、どうも手入れが面倒くさくて長続きしない。  だけど、目の前にあるジッポーは程良い光沢を保ち、ホイールも綺麗で。  何をするにも面倒くさがり、いつだって怠惰なこの男が手入れしているのだろうか、と正直驚いた。

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