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「……麻広ちゃん、ぶっこんでくるようになったね。俺男よ?」 「ふふ、だってゆうちゃんはゆうちゃんだから」  麻広ちゃんは、俺がゲイだと知っている唯一の女の子。  母親も知らないこの秘密を打ち明けた時、麻広ちゃんは「話してくれて嬉しい」と喜んでくれた。そして、くたびれたオッサンだらけのくたびれた居酒屋でなぜか乾杯したんだ。  彼女は彼女で周りが造り出した「理想の女の子」で居続けることに疲れたのだと、零した。  あぐらをかいて大ジョッキで生ビールを煽る彼女を見たのは、きっとこの世で俺ひとりだけだろう。 「完璧な女なんているわけないじゃん!!」と目を据わらせて吐き捨てる麻広ちゃんを見て、大好きだと大爆笑した。恋愛にはならなくても、本当の自分を曝け出しても受け止めて傍に居られる人がいるっていうのは、どれだけの救いになるんだろうか。  定期的に飲みに行ってはいつもの麻広ちゃんから想像もできないほどに歪められた表情でビールを煽る完璧なまでの二面性に、彼女に尊敬の念すら抱いて、いつからかその"女子会"が楽しみになっていた。

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