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翌朝、いつもよりずっと早く目覚めた。
身体に酒が残っていてだるいはずなのに、なぜか頭は随分とすっきりしている。
「……」
ベッドを下り、顔を洗う。いつも通り繰り返してきた、日常。
だけど、鏡に映る自分はここ数年で一番すっきりしている気がしないでもない。
子どものように泣き続けたのは確かに恥ずかしい。でも、それ以上に清々しい気持ちで満ち溢れていた。
決して交わることのない一方通行の想いは、知らず知らずのうちに俺の心を蝕んでいたようで。あのまま、誰の目にも触れぬよう身の内に溜めこんでいたらいつか腐って、崩れ落ちていたかもしれない。
吐き出させてくれた麻広ちゃんが、まるで女神様に思える。
「あ、連絡、いれとこ」
散々泣いて、散々呑んで、散々想いを吐き出して。ただのめんどくさい酔っ払いとなり果てた俺を、麻広ちゃんは放置せず家まで送ってくれた。俺だったら捨てて帰るわめんどくさい。
スタンプ付きで「ありがとう」と送ると、即にっこりと笑って親指を立てるぶっさいくなキャラクターのスタンプが返って来た。
思わず笑いが漏れて、ふと過ぎる。麻広ちゃんは、いいお嫁さんになるだろうなあ、って。
んで、旦那は俺が認めた男しか駄目だなとか思った。麻広ちゃんいい子過ぎて変なのにひっかかりそう。
スタンプを返して、スマホと目を閉じた。
数回の深呼吸を繰り返し、目を開く。
うん、俺は、もう大丈夫。
真壁への想いを捨てることはまだできないけれど、哀しいばかりではない自分がいる。きっと、次に進める。
単純な自分に苦い笑みを漏らし、出掛ける準備をした。
麻広ちゃんの次にメッセージを送ってきた、クソ男が呼んでいるから。
いつも以上に清々しく感じる朝陽に目を細め、伸びをして憎たらしいメッセージを表示するスマホをベッドに投げ捨てた。
『10時までに駅前に来い。でないと公開処刑』
黙れ。とだけ返信をして。
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