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「何が楽しくてやってんのお前」 「え?」  後方から届くきゃいきゃいと騒ぐ甲高い声から早く離れたくて、佐野を追いかけながら問い掛けた。  つかこいつなんでこんなに歩くの早いの。競歩かよ。   「ぶっ」  ビタッと足を止めた佐野に気付かず、思い切りその背中に鼻をぶつけた。  何してんだ、と問い掛けるより先にぐいっと顔を覗きこまれて仰け反った。  ……気が付かなかった。こいつ、真壁と身長変わらない。  真壁もいつも、身長差のある俺の話を聞く時はこうして顔を覗きこんでいた。  ただ、こいつとは違って、いつだって優しい眼差しだったけど。 「何が楽しくて、って。何が」 「は?」 「今、神谷言ったじゃん。何が楽しくてやってんのかって。あの女の子たちのことだろ」  顎で後方を指し示した佐野に倣って視線を移せば、まだきゃいきゃい騒いでいた。くっそ迷惑だろ。あと佐野のスマホの通知音がやばい。うるせえ。  俺の視線が自分のスマホに向いていることに気付いたのか、少し弄ったかと思えばピコンピコンうるさかった音が止んだ。 「で、何」 「いや、」 「早く言えよ」 「だってお前全然笑ってねえじゃねえか。なのに無駄に愛想振りまいて馬鹿みてえ」  それよりなんでこいつ俺にはこんなに高圧的なのマジでむかつくんだけど。  何をそんなに驚いているのか知らないけど、俺の言葉に鋭く尖っていた瞳が僅かに見開かれた。次いで、佐野は俺に背を向けて歩き出した。  無視かよ。

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