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佐野に引っ張られ続けて辿り着いたのは大学。
まさか行きたいとこってここかよ。
やっと足を止めた佐野に掴まれていた腕を振り払うと、残り半分となってしまった悲しい姿のコーラを一気に飲み干した。うええ、炭酸抜けまくっててくそまずい。
「知ってるか、神谷」
「何をだよ。うえ、げろ甘。まずっ」
「――」
「はい?」
うまく聞き取れなくて首を傾げた俺を、眉間に深い皺を刻んで睨んだかと思えばまた大股で歩き始めた。
俺の腕を掴んで離さない佐野の掌は、少しだけ汗ばんでいた。なのに、やけに冷たくて。
歩きっぱなしで額に滲んでいた汗が一気に冷えていった。
……なんで、こんなに嫌な予感がするんだろう。
再び佐野が足を止めた時、額や背中に流れていた汗はすっかりひいてしまっていた。
状況が落ち着いたからなんかじゃない。
その足が、向かう場所が、怖くて。
「さの」
「……」
とん、と背を押されて前に押しやられる。
だけど、足が竦んでまともな一歩も出せない。
俯こうとした顔を、背後から伸びた手が許しはしなかった。
じわじわと煩い蝉の声を聞きながら、俺は視線を"そこ"へ向けた。
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