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 途端に電流が走ったように全身が大きく跳ねた。俺の反応が面白かったのか、押し退けてもその度に強く擦られ、何度も跳ねる。  なんだよ、これ。  だんだん、力が抜けていく。ただ、耳裏を撫でられているだけなのに。  びくびくと跳ねる身体の中に溜まっていく熱。どうしようもないそれをどうにかしたくて、そっと手を伸ばして佐野の服を強く掴んだ。ぎゅ、と。皺になろうが、関係ない。  今の俺の精一杯の鋭い視線を佐野に向ければ近すぎる顔に焦点がずれた。 「え、何、あっ、ッ」  首の、筋。  鎖骨から耳の下へと伸びた筋を舐められ、我慢できなかった声が漏れる。その間も、耳を擦る手はそのままでじれったいような、けれど鋭い刺激が身体じゅうを駆け廻っていた。  噛み締めた唇から漏れ出る嬌声が居たたまれなくて開きっぱなしの口を塞ぐため手を動かせば、佐野の膝が下肢を押し上げてきた。 「ッ、――ん、んッ」  触って確かめるまでもなく、俺のそこはすでに天を仰いでいた。ああ、そうだ。佐野のキスでその前兆はあったけど耳と首への急襲で完勃ちだバカヤロウ。  なのに、佐野は決定的な刺激を与えようとはせず膝で俺の中心を強く押し上げて耳と首をやわやわと指やら舌やらで撫でるだけ。気持ちいい。そりゃあ、気持ちいいさ。だけど、こんなんじゃイけない。   「あーいや、ほんといい顔すんなお前」 「なに、何、なんで、」  視界が滲んでいて、まともに佐野の顔が見れない。  だけど、その声が弾んでいるから判る。……すっげぇ、楽しんでる。男の、俺の身体を。  瞬間、これまでいろんな男たちとしてきたコトが脳内を駆け廻る。  俺も相手も、望んでやしなかったから、さっさと終わらせることが多かった。愛撫も、愛の囁きなんかも、すっとばして。撫でて擦ってイかせて、突っ込んでイって、すっきりして。その繰り返し。  だから、今までなかったんだよ。  ただからかっているだけにしろ、こんな風に丁寧に身体じゅうに快楽を刻み込まれることなんて。  だからだよ。  こんなに素直に、お前が与える刺激に従うの。  快楽の前に、まだまだ性欲の強い20代前半の青少年はひれ伏すしかないんだ。  この痴態は全部全部、絶えず身体を支配していくゆるやかな快楽のせいだ。

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