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ベッドに身を沈め、荒い呼吸を繰り返す佐野を鼻で笑い、手を伸ばした。
目的は、サイドテーブルにある箱ティッシュ。
嫌がらせを含む見せつけのために遠慮なく口に吐き出させたが、愛情なしに飲み込むにはリスクが高すぎる。包み隠さず言えばくそまずい。
「んんッ、!?」
伸び上がった腕と腰を掴み、ぐるりと体制を変えて俺を抑え込んだ佐野はそのまま引き結んていた口を大きな手で塞いできた。
飲み込めと促す佐野と、全力で拒否する俺。
知ってるか。男のそれは口の中に留まれば留まるほどに不快感が増すんだ。
口だけでなく、鼻まで塞がれ呼吸する術をなくした俺は退路を断たれた落ち武者の如く絶望に支配された顔をしていただろう。
それもその筈、この状況を打破するには飲み込むしかない。一度躊躇ったせいで、咥内に留まったそれはさらに生ぬるく、喉を滑らせるには不快でしかないものになり果てている。いや最初からなんだけど。気持ち的に。
いやだと首を横に振れば、また膝で下肢を押し上げられ不意打ちのそれに大きく身体が跳ねた。
「ん、ぐ、……ッ」
同時に粘着質なそれが喉を通過して、新鮮な空気がどっと流れこんできた。
まずいし、むかつくし、多すぎて飲み干せないし。こいつやっぱり殺した方がいいかもしれない。俺の心の平穏の為に。
「てめ、まじ、殺す」
「あーいい顔いい顔」
「黙れ……ッ、げほっ」
さっきまでの余裕のなさはどこに行ったのか。俺にされるがまま果てた佐野は、すでに通常運転に戻ってニヤニヤとむかつく笑みを浮かべていた。
俺の髪に縋って息を荒くさせている時はちょっと可愛いとか思ったのに。ほんとにちょっとだけど。
何度咳払いをしても喉の不快感は消えず、ならばこいつん家の冷蔵庫でも漁ってやろうと身体を起こそうとしてふと固まった。こいつ、いつまで馬乗りになっているつもりだろうか。
「……どけ」
「んー」
顎は怠いし、手や顔はべたべた。早いとこ顔を洗ってさっさと帰って寝たい。
下腹部にあった佐野の重みが消え、やっと解放されたと大きく伸びをしながら上半身を起こした。そう、起こしたつもりだった。だけど、佐野の馬鹿が俺の両脚を掴んで持ち上げてしまったせいでその反動で後頭部から布団に沈んでしまった。
「な、なん、なっ!?」
「男のベッドに連れ込まれといて、これで終わりとかほんとに思ってんの」
「だって、口でっ」
「口でしたらやめていいなんて、俺言ってないけど?」
ゴン。って。
誰かが後頭部をハンマーで殴りつけやがった。たぶん。
でなきゃ、おかしい。
濡れたパンツがズボンごと引き下ろされていくっていうのに、ろくな抵抗もできないだなんて。
外気に触れた俺のそこは、僅かに反応を示していた。
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