53 / 101

12

 最高潮にご機嫌な佐野はキャラが崩壊していることも構わず、ひらひらと俺の眼前で手を振った。 「ま、とりあえず飯食わね?」 「お、おう」 「嫌いなモンは?」 「特にない」  おお、偉い偉い。などと続けて佐野はキッチンへと向かう。  あれだけ俺のやることなすことボロクソに貶していたくせに、何なんだあれは。  首を傾げて視線を下げると、素っ裸の胸板が視界に飛び込んできた。  だけど問題はそこじゃない。 「……」  ギシ、と小さな悲鳴を上げて軋むベッド。  その上を這っていき、すぐ傍にある鏡の前に立つ。  胸と、首筋。二の腕に腰、内腿。至るところに赤い痕が残っている。  蚊に刺されたんだろうとスル―したいが、こんな急所ばかり狙う蚊が居て堪るか。  途中から理性なんかぶっ飛んでたせいで、いつこんなに痕を付けられたのか見当もつかない。  じれったくて、愛されているのだと錯覚しそうになるほど丁寧な愛撫を思い出し、全身がかっと熱くなる。  気持ちいいと、素直に思った。  その痕が、この身体に残っている。    ひとつひとつなぞっていくうちに呼吸が乱れ、一番際どい場所――脚の付け根にある、より濃い色のそれに指先が触れた瞬間、ぶるりと全身が震えた。

ともだちにシェアしよう!