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目の前でわあわあと騒ぐ売れっ子芸人たちに、溜息が洩れる。君たちは、一体何がそんなにおもしろいのかね、と。
予想していたよりも手際のいい佐野は、焦げてしまった鍋を処理するとすぐに野菜やら何やらを切って新しい料理を作り始めた。何か手伝うか、と問いかければ座っててくれと返され、行き場を失った手をテレビのリモコンに伸ばした。
人気のバラエティ番組を見ながら、ぐるぐると頭をの中を巡るのは口をついて出てしまった言葉。
俺のこと好きなの? って……明らかに違いますやん……。俺と佐野の間に、愛だの恋だのが転がっている訳がないじゃないか。
わかっているのに、身体中に残されたキスマークが勘違いをさせる。まだ、奴自身が身体に残っているようにじんと痛みと快楽の名残がある。
こんな強烈なの、恋でもしていないと残らないと思ってたんだよ。
「……」
……なんっで抱かれちゃったかな。
俺、同じ大学の奴に手出ししたことなかったのに。自分の痴態を思い出して、どこか深い穴に潜り込みたくなった。
いや久しぶりだった。確かに久しぶりだった。だけど、それにしてもあのぶっ飛び方は無いだろう、俺。
ごろりとソファに転がって、手を閉じたり開いたりを繰り返す。
ずっと、優しく握ってくれていた。何度もゆるゆると揺さぶりながらも、離しはせずに。
「神谷。飯、出来た」
「……おう」
口や態度は悪いけれど、面倒見はいい。
女の子がこぞってこいつに惹かれてるのは、こういう所なのかな。ものすごく性格ひんまがってるけど。
食わねえの? と問い掛けてくる佐野には情事の後特有の色香は全くなくて、実にさっぱりとした表情をしている。
たぶん、いつまでも引きずってるのは俺だけだ。
さすが遊び人。数居る相手の中に男が紛れていても問題なしかよ。
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