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「うお、美味そう」  席についたと同時に出されたのは、ロコモコとコンソメスープ。どちらからもすごくいい匂いがして、盛大に腹が鳴った。   「食っていい? 食っていい?」 「どうぞ」 「やった」  両手を合わせていただきます!! の挨拶と同時にコンソメスープに口をつけた。熱い、けど、美味しい。  続けてがつがつとロコモコを頬張る俺を、なぜか佐野は微妙な笑顔で見つめている。何、キモイんだけど。  つつ、と皿をすべて寄せて両手で確保して、睨みつけて言ってやった。 「やらねえからな」と。 「ぶふっ」 「何だよ」 「自分のあるし要らねえよ」  ふっとニヒルな笑みを浮かべて、佐野は行儀よく食事を続けている。  綺麗で真新しいキッチンに、広いリビング。ぴかぴかのフローリング。高そうなお皿にグラス、テーブルに椅子。そして、佐野自身から放たれるオーラ。  ザ・金持ち。  全部が金持ちっぽい。俺は見たぞ。寝室にふざけんなよテメェって言いたくなるくらい高級な腕時計があったの。 「なあ、お前ん家、金持ちなの?」 「は?」 「え?」  可笑しいことを言っただろうか。  俺を見る佐野の目は大きく見開かれて、驚きに満ちている。 「知らねえで、俺と一緒に居たわけ」 「お前のことなんぞ知るかボケ」 「……」 「質問に質問を返すな。お前は金持ち? イエス オア ノ―! それでいいんだよ」  ズズズ、とコンソメスープを飲み干して満腹感に満足しながら腹を押さえる。それでもまだ、佐野は返事をしない。  そんなに答えにくいことかね。別にどうでもいいんだけど。

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