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「……へ?」
写真の佐野(小)と、目の前の佐野(大)。
見比べてみて、年齢を想定する。どう見てもこの佐野(小)は小学校高学年くらいだ。それ以来会ってないって、どういうことだ。
今、俺たちは19歳だ。少なくとも、7年は会ってないっていうことになる。実の親に、――それも、こんな子どもの頃から? そんなまさか。
「知らない? サノシズって」
「知らねえ」
「マジか」
小さく頷くと佐野は盛大な溜息を吐いて力無く笑った。
「両親ともに元モデルってやつでさ。今はカメラマンやってる」
「へっ」
「世界的にも有名らしいよ」
よく知らねえけど、と続けて俺の手から写真立てを取ると伏せてしまう。
どこか虚ろな瞳はそのままで、時々強く噛み締めている唇が、少し痛そうだった。
「イベントがある度にひっぱりだされて、一緒にたくさんのフラッシュを浴びてた。この写真を撮ったのも、そういう流れ」
こくん、と息を飲んだのは、俺か。それとも佐野か。
切れ長の目の端が少しだけ濡れているように見えたのは、落ち着いた間接照明のせいなのか。
うっすらと血を滲ませた唇を、佐野はゆっくり開いていく。
「でも、両親と同じ道に進むのは嫌だって言ったこの日、俺は捨てられた」
「え……」
「違うな。置いていかれたんだ。何にもない、ここに」
気の遣えない俺は、間抜けな声で「マジでか」と返すことしかできなかった。
もっと他に言うべき言葉があるだろうに。
ふらりと歩き出した佐野は煙草に火を点け、静かに煙を吐き出す。
「俺に世界に挑む度胸も器量もないことは、誰よりも俺自身がよく判ってた。親が居るから、俺が注目されてるんだってことも」
「佐野、」
じじ……と火種が赤く染まり、煙草が小さくなっていく。同時に、背の高いはずの佐野まで小さくなっていってるみたいで、不安になった。
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