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モデルとか世界がどうとか、よくわからない。
こいつの置かれていた環境が、どれほどのものなのかも。
「ガキの頃に実名晒してテレビや雑誌に出まくってたせいで、今でも知らねえ奴が友達気取りで近付いてきたり。マジやってらんねえ」
「あ」
「……そ、いつも俺の周りに居る奴ら。あれ、親のおこぼれ欲しさだ。もしくは、優越感のためかな」
おこぼれもなんて、置いていかれた俺にあるわけないのにな――俯きながら零した言葉は消え入りそうなほどに小さくて、少しだけ震えていた。
乱暴な手つきで灰皿にねじ込まれた吸殻からは、消しきれなかった紫煙がゆらりと揺れている。
「なのに、お前」
ぐい、と肩を掴まれ抵抗する間もなくその広い胸の中に抱きとめられた。
またかよ、と落とした小さな呟きは華麗に無視された。
「俺のこと、何も知らねえんだもん。くそが」
「なぜ怒る」
「大学入ってすぐの飲み会の自己紹介でざわつきもしねえで他所向いてたのお前だけだった」
「興味ねえもん」
「……」
ぐう、と喉を鳴らした佐野はそのままぐりぐりと額を肩に押し付けてくる。犬か、とつっこめば迫る強さが更に増した。
正直、ここまで聴いても俺の感想は「マジでか」の一言に尽きる。
だってやっぱりモデルとかよくわかんないし。世界とかもっとわかんないし。
「つまり、お前は元ゲーノー人ってこと?」
「……親に引っ張りまわされてただけでそんな大層なもんじゃねえよ」
「何だよじゃあ全然すごくねえじゃえねかばーか!!」
「はあ!?」
期待して損した! とぶつかりそうなくらい近くにあった足を蹴り飛ばして鼻を鳴らした。
すぐさまお返しにと肩を噛まれたから、腕を伸ばして頭をぐしゃぐしゃに掻き混ぜてやった。痛いし、何かお互いに息は上がってくるしで、最高に馬鹿らしい。なのに、なぜかぴたりとくっついた身体はそのままだった。
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