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 ……まあ、こういうところかもしれない。俺もそうだけど、同年代の奴らは皆他人と絡むのを苦手としているから、こういうアットホームな店は避けがちだ。  でも麻広ちゃんの前でそのまま告げるわけにもいかず、誤魔化すようにジョッキを配って無理矢理に乾杯をした。  次々と運ばれてくる料理を「美味い、美味い」と口に運ぶ真壁と志摩を見つめ、ふっと笑いを漏らす。  喧騒に飲まれ、誰の耳にも届いてはいないと思っていたのだけど、隣に座っている麻広ちゃんには聞こえていたようでくんっと腕を引かれた。 「うん?」 「あの、ごめんね。気付かなくて……」 「何が?」 「えっと、だから、二人につけられてるって……」  麻広ちゃんにしては歯切れの悪い物言いに首を傾げつつ、真壁と志摩を見て、また麻広ちゃんに視線を戻す。  ――こいつらのこと? そう、視線で問い掛けて。  すぐさま頷いた麻広ちゃんは残っていたビールを全て飲み干しおかわりを頼むと帆立の塩焼きを頬張った。うん、今日も最高な飲みっぷりだ。 「いや、こいつらと飲みに行くのは久しぶりだし、平気だよ。それより、隠れ家ばれちゃったね、麻広ちゃん」 「……ゆうちゃん」 「ん?」 「何か、あった?」 「えっ」  クスクスと笑う俺を怪訝な表情で見上げ、麻広ちゃんは力なく笑った。  腕を引いていた指先をぱたり、と床に落として。 「何かって?」 「ううん……判んない。だけど、うん」  届いたジョッキを掲げて「かんぱーい!」と何度目かわからない音頭を取り、店中の人に挨拶を始めた麻広ちゃんはまだ、酔っているようには見えない。  だけど、誤魔化すようなそぶりを見せる彼女が珍しくて、俺はそれ以上追及は出来なかった。  ――何か、って。何だろうな。

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