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真壁たちと別れてひとり、繁華街を宛てもなく歩いた。
楽しそうにそここを行き交う酔っ払いたちが微笑ましく思えてしまうくらい、今の俺は満ち足りていた。
想いを伝えることは無かったけれど、妙にすっきりしている。
こんな風に終える恋もあるのだなと、どこか穏やかな気持ちでいられた。
このまま家に帰るのはもったいない気がして適当に歩いてはいるけれど、前みたく誰彼構わず誘って寝たり――そういう気持ちすら湧かない。
「どーすっかなー……」
なんとなく、スマホを開いてユウの名前を探してみる。
ヤりたいとかじゃなくて、なんていうか、今の俺見て見て!! って言いたいだけ。いや、別に何も変わってはないと思うんだけど。
「わっ」
歩きながらスマホをいじってるのがいけなかった。
前から来た人にどん、と勢いよくぶつかってスマホが転がっていく。
真壁がここに居たらきっと「歩きスマホは駄目ってあれほど言ったでしょうが!!」と喧しく叱ってきたに違いない。慌ててぶつかった人に謝って顔を上げた。
「あれぇ? 君、いつか佐野くんと居た子だよねえ?」
でかっっ。
俺より10cmは高いであろう身長の女が俺を見下ろしていた。
顔はあんまり覚えてないけど、派手な化粧と、無駄に露出の多い服装に見覚えがある。前に、駅前で佐野に絡んでた女だ。
相変わらず無遠慮に「やっぱりかわいー! 睫毛ばっさばさ!」と大声で言われたうえ、頭を撫でられてさすがにちょっとキレそう。何なのこの女。
手を払いのけるとけらけらと笑いながら性格は可愛くないと罵倒されたけど、気にしない。相手にするだけ時間の無駄だ。せっかくのいい気分が台無しになってしまった。
彼女の言葉に耳を貸さずスマホを拾いあげると同時に信じられない言葉が聞こえてきた。
「いいもんねー! 佐野くんで遊ぶからー」と。
勝手にしたら。
そう言おうと振り返って、俺は動きを止めた。
……いや、俺が止まったのか? 周りが止まったのか? わからない。だけど、目の前に広がる光景にただ目を見開いて呆然と立ち竦むことしかできなくなった。
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