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酔いつぶれてしまったのか、赤い顔でぐったりと見知らぬ女の子の肩に寄りかかる佐野。
その周りを、さっきの女と他の女の子たちが囲んでいる。誰にするのー? としつこく言い寄りながら。
いやいや、その状態の佐野に何言ったって無駄だろ。
「……何、やってんの」
女の子たちの壁を割って佐野に近付いて頬を軽く叩いてみるけど、頭がぐらぐらと揺れただけで大した反応はない。焦点の合ってない目で眠そうに何度もまばたきしている。
「ふたりだけの二次会行く子選んでもらうの」
ハートマークでもついているような甲高い声で言う彼女に「呆れてます」と正直な溜息を返し、佐野の腕を取る。
さすがにこのまま放っておくことは、できない。この子たち皆肉食獣に見える。佐野が危険だ。
こいつが自分で望むなら誰とだって寝りゃあいい。
……だけど本当は違うだろ、お前。
哀しげに俯いた幼い佐野の顔が、脳裏に蘇る。
「おい起きろ。帰るぞ」
「ん……かみ、や……?」
「そ。馬鹿やってんなよ馬鹿」
背負うには無理がある佐野の腕を肩に回し、歩けと促す。
ずるずると足を引きずってしまって随分不恰好だけど、ここに居るよりはずっとマシだ。
「あー! 何してんの!」
「家に送る」
「なんで!」
件の女が行く手を阻んできたけれど、何も言い返しはせずにぶつかりながら足を進める。
きーきーと喚く金切り声が、すごく煩い。
「……必死こいて外見着飾る前に中身どうにかしろよ。そんなんじゃ男は逃げるって」
「なっ」
「まじただの肉食獣。普通に怖いわ」
呆れ混じりに吐き出して、振り向かずに歩く。
後ろで罵倒してくる声が聞こえてくるけど、追ってくる気配はないからもういいや。
「……かみや」
「あん?」
「悪い……」
ぼそりと情けない声が耳元に落ちてきて、くすぐったい。
「俺の身長でお前支えるの大変なんだから、きりきり歩け」
「……はい」
肘でわき腹を突いて言えば、一層情けない声が降ってきて思わず吹き出してしまった。
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