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 ぎゅっと握り込んでいた佐野の手を取って、ゆっくり開いていく。  そんで、指一本ずつが絡み合うように握って頬にすり寄せた。 「この手が、あんまりにも心地よくてな。気が付いたら、離したくなくなってた」 「やっぱ身体」 「うるせえ最後まで聞け」  ぐう、と佐野の喉が鳴る。  俺の話し方が回りくどいのは置いといて、こいつ短気すぎるだろ。気付いてたけど。 「始まりが身体からでもいいじゃねえか。マジでヤッてから気付いたんだし」 「ぐう」 「お前がいつから俺のこと好きだったのかは知らねえけど、ヤッてねえとこんなことにはなってないぞ」  悪いけどお前のこと、眼中になかったし。と続けるとまた佐野の喉が鳴った。どんだけ鳴らしゃ気が済むんだお前。  は、と息を吐き佐野の胸元に額を押し付けた。  自分の気持ちを隠さずに伝えるのは初めてで、緊張し過ぎの心臓がキモチワルイ。今にも口からこんにちはしそう。  だけど、ちゃんと伝えないと、こいつはきっと判らない。  俺が佐野を求めた理由、追いかけた理由、離したくないって思った理由。全部全部、自分の口で、自分の言葉で言わないと伝わらないんだ。  伝えないと、こいつと俺の関係は何ひとつ進みはしない。  目を閉じて深呼吸を繰り返し、ゆっくりと瞼を上げていく。 「……佐野」  青い瞳が俺を捕える。  いつからかな、この瞳から目が逸らせなくなったのは。  いつからかな、ずっと抱いていた真壁への切ない想いを気にしないで済むようになっていたのは。  佐野のおかげなんだ。  佐野が隣に居てくれたから、真壁を好きな俺が救われた。 「一回しか言わねえからな」 「何を」 「好きだ」 「へっ」  さくっと言って、立ち上がる。  じゃあお疲れ様でしたーと靴を脱ぎ捨ててリビングへ向かう。  はずかしぬ!!! さっきと違う意味で恥ずかしいしぬ!!!!!  バタン、ドタドタ! と大げさな音を立てて追ってきた佐野を背中を向けたまま待った。   心臓が痛い。恥ずかしすぎて顔が見れない。きゅっと唇を噛み締めたら、同時に背後で息を飲む気配がした。

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