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「……ところでお前ってゲイだったの?」 「いや、違う」 「俺が目覚めさせちゃった?」  ぐふ、と吹き出して問いかければ佐野はギシリと身体の動きを止めてしまった。  視線は彷徨い俺の方を向かないし、一瞬で脂汗が額に滲んでいる。  これは――予想していた「そうだよ、ばぁーか!」的なツンデルートの流れを大いに逸れてしまった気がする。  絶対地雷踏んだ。 「あ、いや元々そうだったのか、気付かなかったなー」 「……」  空気重い。  ははっと大きな声で笑ってみたけど、わざとらしさだけが浮き彫りになって胡散臭いにも程がある。  なんかもうこいつの周り地雷ありすぎてどれ踏んだらいけないのか全然わからん。全部踏み抜いてひとつ残らず爆発させてしまえば少しは楽になるんじゃないのかな。 「俺から男に惚れることはなかった」 「……俺、"から"?」  ギギギ、とぎこちない動きで佐野を見据えると、心底嫌そうな顔で声を絞り出した。 「寄ってくるのは、……女だけじゃなかった」と。  地獄の底から這い出たようなおどろおどろしい声に、ちょっと逃げたくなった。    ぎゅううううっと抱き締められたせいで、できなかったけど。 「え、何お前ケツ狙われたことあんの?」 「黙れ小僧」  痛い!! アイアンクロウ痛い!!! あとその台詞どっかで聞いたことある!!!

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