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じたばたと暴れる俺を余所に、佐野は重い息を吐き出して顔面を掴んでいた右手を離した。
こいつマジで俺のこと好きなのかなって疑いたくなるのは仕方ないと思う。容赦ないんだもん。
「いや、それはマジ。好きだ」
「心読むな」
「あー……じゃなくて。うん、だから、興味もあったんだよ。……男って、どんなもんなのか……みたいな」
「はあ」
佐野はがしがしと頭を掻いて、そっぽ向いていた顔を俺に戻すと微妙な笑みを浮かべた。
「男が男に惚れるとかマジで気持ち悪い、ありえねーって思ってたんだけど……お前見てたら、そういうの全部、吹っ飛んだ」
「ふっとんだ」
「おう。真壁を見て、嬉しそうにしたり悲しそうにしたりってころころ変わる表情が面白くて」
俺にはそんな顔、見せないくせに。
ボソリと続けた言葉は拗ねまくってて、また心臓が痛くなった。仔犬鳴いた。きゅうううんって。
「だから俺、お前がどんだけ真壁のこと好きだったか知ってるつもりだぞ。俺に同情して応えたりしなくていい、」
「うるせえ」
察しがいいくせに、どうして肝心なとこで鈍感なんだろうコイツ。
ぱちん! と勢いよく両手で佐野の頬を包み込んで、ぐっと顔を近付けた。
身長差があるせいでめちゃくちゃ背伸びしないときつかったけど、ぎりぎり唇が掠める程度には近付いた。めっちゃ足ぶるぶるなってるけど。
「ずっと見てきたんならわかるだろ。俺の目が、今誰を見てるか――俺が、どんな顔してるかくらい。……信じろよ」
「……」
おずおずとあと少しの距離を佐野が埋めて、唇が触れ合った。
いつも性欲を満たすのが最優先で、こういうキスはしたことなかったなあ。俺の初めてを、無意識に次々と掻っ攫っていく佐野に、歯痒さと愛おしさが募る。
佐野の指先が触れる箇所がいつも気持ちよくて心地よかったのは俺のこと大好きだったからなんだなあ、なんて。自惚れも甚だしいことを囁けば、耳を真っ赤にした佐野に唇を噛まれた。
お返しに唇をあむあむと噛んでなぞれば、器用に動く舌が俺の咥内に差し入れられ、じわじわと堪えようのない快感が這い上がってくる。
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