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「えっ」
目を真ん丸に見開く麻広ちゃんから、俺はそっと目を逸らした。
気まずい。すごく、気まずい。
いくら彼女が俺の性癖を知っているとはいえ、"彼氏が出来た"と報告するのはいかがなものか。
やめておけばよかったと後悔するもすでに後の祭り。
恒例となっていた月一の女子会の時に、ついぽろりと報告してしまった。酒の勢い怖い。
「び……っくり、した」
「ご、ごめん。麻広ちゃんには心配かけたし、報告しておきたいなと思って」
「ううん。言い難かったよね。ありがとう……嬉しい」
ふんわりと微笑む麻広ちゃんは今日も変わらず可愛い。
ただし、その小さな手に巨大なビールジョッキを持っているから違和感がすごいけど。
「あーあ。こっそり賭けてたのに」
「何を?」
串焼きを持った手をくるりと回し、麻広ちゃんは笑った。
「私とゆうちゃん、どっちが先に彼氏ができるか! 負けちゃった」
「……言ってよ。勝ち損じゃんか」
「言わなくてよかったー」
へへ、と笑いながら麻広ちゃんは串焼きにぱくりと噛みついた。
どこか満足げな表情に首を傾げて理由を問いかければ、串焼きを飲み込みながら彼女は周りのおっさんたちに遠慮してかトーンを落とした声で続ける。
「ゆうちゃんが、少しずつ元気になっていった理由は佐野くんだったんだなあって。嬉しくなったの。……良かったね」
「……うん」
あんな奴だけど、あれからすごく大事にしてくれてる。
過保護かよ! と叱りつけたくなるくらいに。今日も、送ってくれたし迎えに行くから連絡しろと言われた。女の子じゃねえっつうに。
まあ、これはただの惚気になるから麻広ちゃんには言わないけど。
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