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「私もそろそろ恋愛のひとつやふたつくらいしないと。枯れちゃうー」
「枯れないって」
でろーんとテーブルに突っ伏した麻広ちゃんはいつもより酒のペースが早いせいか、珍しく酔っ払い気味だ。
そんな姿でも可愛い麻広ちゃんのどこが枯れているというのか。
がしっと麻広ちゃんの肩を掴んで、少しだけ強引に揺する。
「麻広ちゃん。彼氏作るのはいいけどね。ちゃんとした男じゃないと俺怒るからね」
「……お父さんみたいなこと言うね」
「大事なんだから当然でしょ」
「へへ、嬉し」
ふにゃりと笑う麻広ちゃんは酔っぱらっているせいか、涙を浮かべた目を眠そうに擦っている。
帰る? と問いかけようとした瞬間、俺のスマホがものすごい勢いで鳴りだした。
「……げ」
「どうしたの?」
「う、うん。ちょっとごめんね」
嫌々ながら着信を受けると、案の定低い声が耳の貫通していった。
『ちょっと近付きすぎじゃないのぉ!?』って。なぜか佐野はこういう風に小言を言う時ちょっとオネエっぽくなる。
あとこいつはどこから俺を見張ってるんだろうかと絶えず疑問がもたげる。
堪え切れない笑いを漏らして「もうすぐ帰るから」と宥めていると、麻広ちゃんが肩をちょいちょいと突いてきた。
代わってもいい? とジェスチャーで伝えてくる彼女に戸惑いながらスマホを差し出すと、コホンと咳払いをして声を整えた麻広ちゃんが口を開く。
「こんばんは、佐野くん」
『はっ!?』
持ってなくても聞こえるくらいの声で答える佐野が驚きすぎてあたふたと慌てる姿が用意想像できて、テーブルを叩いて笑ってしまった。
ふざけてオネエ口調を続けていたから、そらびっくりするわ。
「今日はゆうちゃん借りてごめんね。すぐにお返しするから。……あと、」
「麻広ちゃん?」
続きは、麻広ちゃんが口を手で覆ってしまったせいで俺には聞こえない。
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