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第4幕
「お前どうすんだよ。アレすっげー怒ってたよ」
「ぶははは。怒ってたねー」
俺達は再び教室を追い出された。今度は予定がない。
「どーすっかな。金無いし。しょうがね、帰るかー」
「先輩」
「んー?」
「好きです」
「『却下』──ちょっと今日、回転率上げすぎ。昨日オイル差した?」
「すいません。今のはマジで言い間違いス」
「何と間違うの!?雑すぎじゃね?」
「そっすね」
瓜生がボケて返さない。腕組みして何か考え込んでいる。
「……なんか気になんの」
「うん。ちょっと──」
珍しく真剣な表情だ。
……黙ってりゃイケメンなんだよな、こいつ。
背も高いし髪長ぇけどオタクってよりチャラ男に見えるし、文芸部つーより軽音部。
異世界ファンタジー語らせたら止まんないけど。俺はミステリー派。
「先輩」
突然肩を掴まれ向き合わされた。大きなタレ目が俺をジッと見つめている。
「俺、今日は帰ります」
「お、おお……」
そんだけかよ。何か今、考えてただろ。──悩んでんじゃ、ねえのかよ。
俺が見つめ返すと瓜生は重たそうに口を開いた。
「実は──ずっと気掛かりでしょうがないこと、いっこあんだ……」
「なんだよ。言ってみろよ」
「昨日……ウチ帰ったら通販で買ったゲイビデオのパッケージが、どこにも無かったんだよ。気のせいかと思ったけど良く考えたら絶対そんな事ないんだよ……あああどうしよう。おかんに見つけられてたらどうしよう!」
「それ今日、家族会議じゃん!お前んち」
「──冗談だよ?俺、男じゃなくて先輩が好きなだけだから」
瓜生は肩の手を離して目を逸らす。
黒だ。黒だよ。こいつ真っ黒だ。
「あ、ねえ、これからウチ寄ってきなよ先輩」
「家族会議に参加させないでぇー」
「あはははは。さっきの本気にしたの先輩。やだなあホントにジョーダンですって」
あーでも分かんない。こいつの本気がいま本っ当に分かんない。だって面白い方しか選ばないもん、こいつ。嘘でも真実でもなんでもいいんだよね。
「今なら特典としてハーゲンダッツ贈呈中。しかもファミリーサイズ」
「!お前マジかそれ」
「うん」
「フレーバーは!?フレーバーは何だっ」
「クッキーアンドクリーム」
「よし。行くか」
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