27 / 2160

ー友情ー27

 夜中というべきか夜明けというべき所なのか三時頃に望達が働く春坂病院では救急車のけたたましいサイレンの音が鳴り響いてくるのだ。 だがそんな事は望達にしてみたら日常茶飯事の事なのだから患者さんが来るまでに色々と準備し待機していた。  そんな中、当直だった望と和也は救急隊員から受け入れ要請があって、病院で受け入れ態勢を整えた頃にその救急車が夜間救急入口の方へと入って来る。 「救急車が来たみてぇだな」 「ああ」  当直中に救急車が病院に入ってくるのは慣れたもんだ。 夜中に来るという事は患者さんが緊急事態なのは間違いない。  真剣な眼差しでストレッチャーから降りて来る患者さんを見つめている望と和也。  それが誰であっても一緒だ。  だが救急隊員に名前を聞いた途端、望の顔色がみるみるうちに変わるのは無理もないだろう。 それが知り合いなら余計にだ。 「名前は……桜井雄介さん」  その名前を聞いた瞬間、望は目を見開く。  そして次の瞬間にはそのストレッチャーに乗っている患者さんの顔を確認するかのように見ると、やはり救急隊員が言っていた名前と望が知っている人物と一致してしまったようだ。 「え? あ……う、嘘だろ!? ちょ、桜井さん! 桜井さーん!!」  望の真横で救急隊員が色々と症状やらなにやらと伝達しているのにも関わらず望は親しい仲かのように、ひたすら雄介の名前を呼び続ける。  だが今の雄介というのは意識がない状態で運ばれて来たからなのか望の問い掛けに一切答える事はなかった。  次の瞬間、雄介が着ている消防の制服の内ポケットから何やら紙のようなメモのような物が落ち、それを望は拾う。  確かにそれは雄介の物なのだから読んではいけないと思いながらも望はその手紙の内容を読み始めてしまっていた。  一応望はその手紙を読んだものの、今はその手紙の内容どころではない。  望は自分の事を落ち着かせる為にひと息吐くと、そこに居る看護師達に指示を出す。  雄介の手術を終わらせた望。 今回も雄介は望のおかげで一命を取り止めた。  後はICU室で様子を見ながらの状態になったのだから、一先ず望は自分の部屋へと戻って行く。  そしてさっき雄介の内ポケットから落ちた手紙を読み直すのだ。 「……マジかよ!?」  さっきはほんの一瞬目を通しただけだったのだが、今度は真剣に読んでみたようだ。 「桜井さんが誰かに命を狙われているだと!? しかも、初めて桜井さんがこの病院に来た時から……ってか、犯人見つけてやらないと、例えまた完治しても再びこの病院に来てしまうって事なんじゃねぇのか? 今回は一命を取り止めているけど……もし、今度ここに運ばれて来た時に、もう、俺の手で施せないような状態で来たら?」  今はその手紙の内容を見た瞬間、手を震わせる望。 だって誰もがそうだろう。 そんな脅迫じみた内容の手紙なんか普通の人では殆ど無い話なのだから。 実物を見てしまったら手が震えてしまうのは当たり前なのかもしれない。  さっき一瞬取り乱してしまった望なのだが、直ぐに冷静沈着な自分へと戻しフッとある事を思い出したのか和也がいるICU室へと向かうのだった。

ともだちにシェアしよう!