144 / 2160
ー記憶ー88
その望の質問に対して雄介の方は言葉を詰まらせる。
今望は雄介に向かって『君は……?』と問うて来たように思える。
その言葉が雄介の頭の中で何回もリピートされているのかもしれない。 暫くの間雄介はフリーズしてしまっているのだから。 しかし何で望は雄介に向かってそんな事を言っているのであろうか。 そしてまだ雄介の頭の中では今の望の状況を理解出来てないのであろう。
雄介はもう一度、確認の為に望へと問う。
「今、俺に何て言うておった? もしかして、お前……俺の事知らんのか?」
こんなありきたりな事、聞きたくはない。 だけど確かめたかった。 どうして自分の事を「君は?」と聞いてくる理由を。
「君は耳が悪いのかな? だからだなぁ、君は一体誰なんだよ……?」
やっぱり聞き間違いではなかったようだ。 何度聞いても質問の答えは一緒だ。
とりあえず望は雄介の事を覚えてはいないようだ。 それだけは今この場でハッキリと分かった。
今まで望の側に居た雄介だったのだが、望の元から離れて椅子へと腰を下ろす。
完全に今ので分かった事があった。 二度も質問しているのに望は二度とも同じ答えだったのだから。
そう望は雄介の事を完全に知らない存在となってしまっているという事だ。
記憶がないという事は世間で言われている記憶喪失というものであろう。
救急車のサイレンの音は止み望が働いている病院へと入って行った。
救急車が止まり後ろの扉が開くと先に降りたのは雄介だ。
するとそこに居たのは和也だ。
「……え? あれ? 雄介?」
「……へ?」
ともだちにシェアしよう!

