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ー記憶ー97
「まぁな。 しかも、今日一日、仕事の合間をぬって望の様子を見に来ていたんだけど、日常的には問題ないようなんだよな。 普通の会話もちゃんと出来るしさ」
「会話は出来るんやなぁ。 ほな、覚えてへんのは人物だけなんか?」
「あ、いや、過去の記憶もなんじゃねぇのか? 少なくとも俺と出会ってからの記憶はねぇ訳だしさ。 あとは仕事の方なのかな? そこまでは仕事してみねぇと分からないんだけどさ」
「そうなんか」
二人の間で会話が止まると望の寝息だけが聞こえてくる。
「ほな、望の方もまだ寝とるみたいやし、俺、帰るな」
「そっか……また、明後日も来るんだろ?」
「ああ、まぁな」
「それは別に構わないんだけどさ。 お前も方も体には気を付けろよ。 望ばっかに構うのはいいんだけどさ……自分の体調の方も管理してくれねぇと困るしさ。 望がもし回復してお前がいなかったら困るだろ?」
雄介は和也が気を使ってくれた言葉に微笑むと、
「お前に言われんでも分かっておるわぁ。 でも、ありがとうな。 ほな、また……明後日……」
そう手を掛けていたドアノブを開けて雄介は望の病室を後にする。
病院から帰り途中の雄介。
今日はいつもより家までの道のりが遠く感じているようだ。
いつもなら、自分の隣には望がいたからなのかもしれない。
確かに一人で歩いているより、もう一人誰かと一緒に歩いていた方が遠くても近くに感じる。
逆に一人で歩いていると近くても遠くに感じるものだ。
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