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ー空間ー171
「え? まぁ……もうすぐ、着陸出来るし……逆にそこに座っておいて欲しいわぁ。 ほら、もう、あそこに光りが見えてきておるやろ?」
雄介の方は望に背中の傷がバレないように正面の方へと向かせ自分の顔色もバレないようにと正面へと視線を向ける。
雄介の背中の傷はまだ治ったっていう訳ではない。 意識だけをどうにか保っているのが精一杯という事だ。 だが望は医者であって雄介の恋人だ。 そんな事、望には絶対に悟られたくはなかった。
そんな事を知ったら望の事だ心配して操縦するのは止めろ! って言われるに決まっている。 今、雄介が操縦桿から手を離してしまったら、この飛行機は墜落してしまうのは分かっている事だ。 だから雄介はこんな状態でもこの操縦桿だけは離したくはないと思っているのであろう。
「雄介……俺に誤魔化そうとしているみたいだけど……それは無駄だよ。 だけど、今はこの飛行機を無事に地上へ下ろせるのは多分雄介しかいないと思う。 だから、乗客の命はお前に預けるからさ……どうにかして、この飛行機を無事に地上へと下ろしてくれねぇかな? 俺が言いたいのはそこまでだ。 俺が操縦桿を握ってもいいんだけど……やっぱ、そこはなんか雄介の方が出来るっていうのか任せられるっていうのか……俺にはそういう救助の方の精神力はないが雄介にはそういう方の精神力はありそうだからな。 背中の傷は後で手当てするからさ」
望の方はそう副操縦席の方に座ると正面を向いたまま雄介へと話すのだ。
雄介は大きなため息を吐くと、
「なんや……怪我の事気付いておったんかいな。 とりあえず、今は俺にしか出来ない事やと思うし。 望に治療してもらうんは地上に降りてからって事やんな」
「ああ……」
望はそう言うと副操縦席の背中へと寄り掛かかるのだ。
雄介は怪我はしたものの望との約束通りに死なずにいてくれたのだから、そこはいいとしよう。 とでも思ったのであろう。 だが、まだ、この事件については終わってはいない。
後は雄介が無事この飛行機を地上へと下ろしてくれることだ。
望がこの操縦室に入って一番に雄介の事を見たのだから雄介の怪我の具合とかというのは何となくだが分かっていた。 もし雄介が無事この飛行機を地上へと下ろす事が出来たなら直ぐにでも救急車を呼んで病院へと向かい輸血と背中の怪我を縫わなければ雄介の命だって本当に危ない状況でもあるのも分かっていたようだ。
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