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ー空間ー172

 だが雄介の背中の傷は本当に尋常ではないという事は望自身も分かっている。  確かに雄介は望にその背中の傷は見せてはいないのだが床に流れ出ている血の量を見ればそこは一目瞭然だ。 流石のこの血の量では雄介の体力、気力が最後まで持つかどうかという所まできてしまっているのだから。  望が正面を向くと、ゆっくりと飛行機は高度が下がってきているようで目の前にはもう飛行場の滑走路が周りの灯りと共に見えて来た。  雄介の方はヘッドセットから聴こえてくる管制塔からの指示に従ってどうにか飛行機を着陸させようとしていた。  飛行機の方はやっと滑走路の真上位まで来たのであろう。 雄介は飛行機のタイヤを管制塔の指示に従いながら出す事が出来た。 後はちゃんと飛行機が無事に着陸出来るか!? という所だ。  今、飛行機がバウンドしたのだからタイヤが今その滑走路へと着いたというのは分かる。 これが、ちゃんとした操縦士だったらバウンドなんかせずにタイヤを滑走路下ろせたのだろうが、そこは雄介は素人だ、だからバウンド位は仕方がない所だろう。 後は速度を落として止まれればいいだけの話。 だけど、これだって操縦桿を握っている者にとっては気は抜けない所でもある。  止まる場所がオーバーしてしまえば建物にぶつかる可能性だってあるのだから、ここが最も気が抜けない所なのかもしれない。  流石の望も瞳を開けられる事が出来なかったのか瞳を瞑っていると急に飛行機の動きが止まったのが分かった。  どうやら無事に地上へと着陸したようなのだが、そこで望はゆっくりと瞳を開ける。 すると本当にギリギリの所で建物にはぶつからないで済んだ位で飛行機は止まっていたようだ。 そこは、一応、素人の雄介にしては良かった所なのかもしれない。  そして望はすぐさまヘッドレセットで救急車を要請する。 そのあと望は雄介の腕を肩へと回すと客席の方へと連れて行って先ずは止血と応急処置をするのだ。  それから暫くして救急車が到着すると操縦士や副操縦士も救急車へと運ばせ望も雄介と一緒に病院へと向かう。  望は病院には付いて来たものの、ここは自分の病院ではない。 だから雄介の手術にも処置も出来ない状態でもある。 望はその病院のロビーで雄介の処置やら手術やらが終わるのを一人で待っていなきゃいけない状態だ。  夜のロビーというのは本当に静かだ。 昼間は患者さんで賑わっているのだが本当に誰もいない。 そして暗い。 それだからなのか、いやに怖く感じる。 当直でいる時の病院は特に怖いと感じたことはない望だが、こう独りぼっちで待たせられていると怖いのかもしれない。 そして今は治療を待つ関係者の気持ちなんであろう。  だが、この静かな空間で思い出されるのはさっきのハイジャックの事だ。

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