953 / 2160

ー波乱ー156

 最初はなかなか言葉は聴こえて来なかったのだが最後の力を振り絞るような声で、 「ま……さか……そこに……ケホッ! ケホッ! 居る……のは……っ……ゆ……ぅ……介……なのか?」 「ああ! そうや!」  その声の持ち主が望だという事が分かった雄介は直ぐに笑顔となって、そのコンクリートとコンクリートの間に上手く挟まっている望の方へと視線を向ける。 すると自然と視線があった二人。 「今な……和也にここに望が居るっていう事を聞いて、まだ、俺の中では望がここにおるなんて事、半信半疑やったけど、これで、真実やって事が分かったわぁ……まぁ、その名前で俺の事、呼んでくれるのは望と和也しか今は居らんかったしな……それに、声を間違える訳がないやろ? 望……」 「ああ……」  苦しそうな声ではあるのだが、そう返事する望。 「もう少しだけ待っててくれへんか? もう少ししたら、この望の上に乗っかってるコンクリートの瓦礫を退けてやるし」  そう明るく言う雄介なのだが内心では身内を助けるって事に動揺しているのかもしれない。  しかも今日は雄介からしてみたら久しぶりの仕事で、いきなり望の事を救助するとは思ってはいなかった事なのだから。  コンクリートを退けると言ってもそう簡単にはいかないようだ。  望の上には相当な量のコンクリートが乗っかっているのだから。  しかし望はこんな状態でよく生きていたと思う。  雄介は和也の方に走り出すと、 「とりあえず、望はあのコンクリの中で生きとるし、後は俺等に任せてくれたらええからな」  和也に向かいそう言うと雄介は望を助ける為になのか大型重機がある所へと走って行くのだ。  雄介はそれを動かして、ゆっくり素早く望の上にあるコンクリを退け始める。  そして十分もした頃だろうか? 雄介のおかげで望の上に乗っかっていたコンクリートの瓦礫は綺麗に除かれ、そこから後の作業は手作業になった。  何人かでその瓦礫を除けていると望の背中が見えて来て望がうつ伏せの状態で埋まっていたのだ。  雄介達レスキュー隊員は完全に望の上にあったコンクリを除けると救急隊員を呼び寄せ望の事を診てもらい応急処置をしているのだが、その救急隊員は何故か首を振ってしまっていた。  まさか望がこのコンクリを退けている時間に生き絶えてしまったという事なのであろうか? 雄介は望に向かい手袋を外してそっと手を伸ばす。  望の体が冷たくなってきていれば死を表す。 だが温かければ温もりがあれば、まだ生きているという証拠でもある。

ともだちにシェアしよう!