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ー波乱ー165

 和也は望にそう言われて車椅子の方を取りに向かう。 「車椅子って、片手じゃ操作するの無理なんじゃねぇ? だからさ、俺が連れて行ってやるよ」  望は車椅子に移動すると、 「平気だから……」  と相変わらずそうぶっきら棒に答えると片手で車椅子を動かしてみるのだが、やはり片手では上手くは動かせないようだ。 「あれ? おかしいな? 何でこう患者さんのように上手く動かせないのかな?」 「そりゃさ……患者さんの方は慣れてるからなんだよ。 望は慣れてないのだから、俺に任せてくれたらいいんだろ? こういう事も俺の仕事なんだからさ……。 ってかさー」  そう和也は何か言おうとしたのだが、というのか、車椅子を上手く使ってるのは、みんな足を怪我してる人達だ。 と突っ込みたかったのだが望の場合はそうと決めたら結構頑固なのだから和也はため息を吐きながらその望の様子を見ている事にしたようだ。 「いい! お前に頼むとろくな事にならないからな……」 「あのなぁ、まだ、俺の事信用してくれない訳? それはいいんだけどさ……トイレの方に早く行かないとマズイんじゃねぇのか?」  和也は望が乗っている車椅子を動かし始めると病室を出たと同時に雄介に会う。 「望!」  そう言って笑顔で望の側へと近寄って来る雄介。 「大丈夫やったん?」 「まぁ、腕の方がヤバかったみたいだったけどな……後は大丈夫だったから平気なんだけどさ」 「それなら良かったわぁ」  雄介はそう言うと和也へと視線を合わせて、 「車椅子なんか使って何処に行くつもりだったん?」 「ん? 望がトイレに行きたいって言うからトイレに行く所だったんだけど……まぁ、雄介が来たんだったら、雄介にその仕事任せた方がいいのかな? それに、雄介に色々世話してもらった方が望はいいんだろうしさ」 「はぁー!? ちょ、ちょっと待てよ……誰がトイレに付き合ってくれって言った!?」  和也はその望の言葉にため息を吐くと、 「望はまだ患者さんの気持ちが分かってない訳? 片手が使えないって事がどういう事なんだか分かってねぇんだろ? まぁ、いい機会だから、望が患者さんの気持ちになってみるっていうのもいいんじゃねぇの? 片手が使えないっていうのはどんな感じかっていうのが分かると思うからさ」  いつもの和也だったら、そこはふざけながら言う所なのかもしれないのだが仕事として考えているのであろうか? そう厳しい言葉で言ったようだ。 「とりあえず、雄介さ……望が本気で根を上げるまで、手は出すんじゃねぇぞ」 「あ、ああ……おう!」  雄介は和也に何か言いたそうにしていたのだが、今、和也から出ているオーラみたいなのが言い返せないような気がして雄介の方も和也の言う通りに望の事を見守るだけにしたらしい。  すると和也は雄介の耳側で内緒話を始める。

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