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ー海上ー54

 その裕実の声に望は慌てたようにテレビ画面の方に視線を向けると裕実が言っていた通りに裕実が「意外……」と言っていた事が分かったような気がする。  そうお笑い番組だったからである。 「ば、馬鹿っ! 違ぇよ! 掛けたらこの番組だっただけで俺の方はこんな番組本当は好きなんかじゃないんだからな!」  そう慌てて言う望の対して裕実の方は悟るように、 「いいじゃないんですか? お笑い番組でも……。 人間って怒ってる時よりも笑ってる時の方が楽しいんじゃないんでしょうか? 僕も本当はお笑い番組なんてあまり好きじゃなかったのですが、お笑い番組の楽しさを和也に教えてもらったんですからね。 望さん……一緒に見ませんか? きっと、和也が悔しがると思うんですよ」 「だな……」  望も和也の性格をよく知っている。 だからなのか、その裕実の言葉に乗ったのであろう。 そう和也の言う通り自分達だけお笑い番組を見てるって事になったら悔しがるに決まっている。  そうだ和也や望はいつも和也に色々やられっぱなしなのだから、たまには和也よりも優位な立場になってみたい事だってあるのだから、とでも思ったのか望はそのままお笑い番組にしといたようだ。  望からしてみたら本当に普段からこんな番組は一切見ない。 だからだったのか、お笑い番組ってこんなにも面白かったのか……と気付いたのかもしれない。  そして望の方はとうとう我慢出来なくなってしまったのか腹を抱えてまで笑ってしまっていた。  その様子に望の隣に座っていた裕実の方は望に向かって微笑んでいただけだったのだが望の笑いに反応したのは和也だ。 「あー! ちょっ、お前等なー! 人が一生懸命、飯作ってるのに……お笑い番組を見てるなんてズルいぞー! しかも、それさ、俺が一番好きなお笑い番組なんですけどー」 「和也はご飯作っていてくださいね。 僕はお腹空いてるんですから」  それを裕実に言われると流石の和也もお笑い番組が見たいとは言えなくなってしまったようだ。  裕実がいない頃の和也だったら別に料理なんかよりもお笑い番組を取っていたのかもしれないのだが今はお笑い番組よりも裕実の事を大事に思っている和也は今の裕実の言葉が一番効くのであろう。  意外にここに来てこの中での最強なのは裕実なのかもしれない。  そして和也は料理作りを早く終わらせようとスピードアップをしたのだが和也が作り終えた頃にはそのお笑い番組が終わってしまったようだ。 和也がテレビ画面に視線を移した時にはもうエンディングロールが流れていたのだから。 「あー! 案外、お笑い番組って面白いのな……久々にこうお腹抱えて笑ったような気がするわぁ」  望は久々に笑いスッキリしてソファから立ち上がると料理を作っていた和也の方が今度不機嫌そうにしていた。

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