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ー過去ー102

  望はある事を思い出したのか、急にソファからテーブルの方へと向かうと、 「あのさぁ、今日、和也と喧嘩しちまった」 「……へ? 望と和也がか!?」  雄介は出来た料理をお皿に盛り付けている途中で、いきなり望にそんな事を告げられたのだから、そのお皿を持ったまま目を丸くしたまま望の方へ顔を向ける。  望はその雄介の言葉に頭を頷かせていた。 「最近、どうないしたん? 望……喧嘩ばかりしてるやんか」 「原因っていうのは自分でも分かってるよ。 俺が悪いのも分かってる。 だけど、素直になる事が出来ねぇんだよな。 いつも喧嘩の理由っていうのはそれ……雄介の時も和也の時もそれなんだからな。 分かってるんだけど、どうしようもねぇんだよ……言えねぇんだから」  そう切なそうに語り始める望。  雄介はテーブルの上に作った料理を並べると望の前に座り、 「望……ちょい、説教みたくなるかもしれへんけど、怒らんで聞いてくれるか?」  その雄介の言葉の望は頭を頷かせる。 「望が素直じゃないのは十分に俺も承知してんねんけど……まぁ、そこは望の性格なんやから望が素直になろう! って思わへんくても構わへん。 ほんなら、使い分けられたらええんと違う? それに、自分でも原因が分かっとるんやったら、反省しないと意味がないやろうしな」  雄介はそう強くは言わずに望に語りかけるかのように言うのだ。 「確かにそうなんだよな」 「和也といつも通りになりたいんやったら、今回の事はしっかりと謝った方がええと思うで……和也の方もちゃんと謝れば特に気にするような奴とは違うしな」 「やべっ! それ、和也にも同じ事言われたわぁ」 「ほなら、そうするしかないやろ? それを一回だけ言えたなら、後は仲直り出来る。 って自分に言い聞かせたらええんと違うの? そしたら、謝る事が出来るやろ? 昨日はちゃんと俺に謝る事が出来たんやから、望には出来る!」  雄介は望の肩を軽く気合いを入れるように叩くと、 「絶対に大丈夫やから。 ま、とりあえず飯食おうや……冷めてまうし……」 「ああ」  そう返事はするものの、未だに浮かないような表情をしている望。 「望にとって謝るって事、そないに難しい事なん?」 「あんまり人に謝った事はねぇからな」 「それって、どういう事なん?」 「だから、小さい頃から謝るっていう環境が無くてな、なんか、恥ずかしくて言えなくなっちまうんだよな」 「望は小さい頃から悪い事はした事ないん?」 「ずっと、ばあちゃんと住んでたしな……ばぁちゃんはあんまり怒らなかったし、まぁ、毎日のように勉強してて悪い事をしている暇がなかったっていうのかなぁ?」

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